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第11話

「何にする? ザッハトルテ? ティラミス? それとも、フルーツタルト?」  ウェイターのトレイには、華やかなケーキがたくさん並んでいる。  バーラと共に席に着いたニネットは、それらのケーキを勧めてみせた。 「いくつでも頼んでいいから!」  そう言うニネットに、バーラは小さな声で、イチゴ、とだけ言った。  トレイの上でひしめく豪華なケーキの中に、シンプルなイチゴのケーキ。  これがバーラの、今の心を表しているのかな、とニネットは考えた。  だがそれを、否定はしなかった。  もっと美味しいケーキはいくらでもあるとは、言わなかった。  運ばれてきたイチゴのケーキを、バーラは黙って食べた。  熱い紅茶で舌を少し火傷してしまったが、それをニネットに言う事もなかった。  ただ、ケーキは甘くておいしかった。  紅茶も温かく、バーラの身を、心を潤していった。 「おいしい?」 「……うん」  二人が交わした会話は、これだけだった。  それでもニネットは安心したし、バーラの心も血を流すことをやめた。

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