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第3話
働くようになってから四季は仕事が忙しいって相手にしてくれなくなっててね、かまってほしくて、もっと俺に興味を持ってほしくて四季をイメージした物語を作ったりしてた。
一方的に?かな。それで賞の最優秀賞を取り、本として世に出たら何でも一つ俺のお願い聞いてくれるって約束してさ。俺は、その通りになるなんて思っても見なかったよ。ちょっとでも良いから四季に俺のことを見てほしかっただけ。思惑通り?驚いたことに?その本が俺の処女作になった。思いの外売れたんだよ、どこかの賞もとったし。全部四季に自慢しようと思ったんだ、約束のお願いも叶えてもらおうって。
……四季はそれまでに無かった隈が出来てて、ストレスが溜まっているようだったから、俺の受賞、作家デビューという幸運のおすそ分けで良い気分転換になれば良いなって思って。ちょっとだけ、厚かましかったかな?って思ってるんだけどね。
このことを報告したとき四季はね、喜んでくれたよ。うん、凄く喜んでくれたと思う。
もうずっと使ってないよってくらいの動かない表情筋を使ってぎこちない笑顔作って。夏なのに長袖つけた、痩せてサイズが合わなくなったのかブカブカの萌え袖で。散らかった部屋には色んな種類のエナジードリンクの缶と栄養ゼリーのゴミが溜まってた。だからね、俺のお願い聞いてくれるって約束を叶えてもらったんだ。それはずっと前から思ってたこと、ある意味で言えば幼いときからやりたいと思っていたこと。
«一緒に暮らそうって»
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