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第5話
だけどねその頃には、一緒に暮らしているはずなのに俺の知らない四季になってた。
お酒に弱くて酔うと正体不明になるところはそのままだったけど。それでも前は吐くまで飲まなかったし。むしろ四季はお酒苦手だったし、俺が飲むと凄い顔をして俺のことを凝視してたし。
スランプでやけ酒した時よほどヒドイ目に合ったんだろうね。俺は覚えていないけど、朝になったら部屋は散らかっていて
痛いのが嫌いだからって、注射で涙目になってた四季はリストカットなんてしなかった。
いや、出来なかったはずだった。常に笑っていて、どんな時も真顔でいることなんて出来なかったし、何時までもボソボソと独り言なんて言わなかった。何時までも自分を責めたてたりなんてしなかった。失敗してもカラッと笑っていて、呆れることも忘れて俺もつられて笑うくらいだった。
ねぇ俺は怒ってるんだよ、なんでだと思う?四季は人の気持ちに共感して、寄り添うやさしい子だから、疲れたら一人で抱え込まないでって。悩みも二人で半分こしようって。何回も何回も言ったよね?
俺はね、本当は寂しかったんだよ…何で俺を頼ってくれないんだって。四季にとって俺はその程度の頼りにもならない存在なのかな?って。
……わかってる、わかってるんだよ。四季は人に頼るの苦手だよね。頼ることは相手に迷惑かけちゃうって思っちゃうんだよね。四季は人に迷惑をかけると罪悪感が芽生えるんだよね。でもね、頼られて嬉しい人もいるって知ってて欲しかった。俺のことを頼って欲しかったな。
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