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第6話

一緒に暮らして2ヶ月が経った頃、四季の仕事について初めて知ったよ。それまで教えてくれなかった仕事について四季は初めて教えてくれた。それは四季がご飯を半分以上残すようになって、たくさんの種類の薬の量が増えた頃。  四季の仕事はね、呪本を集めて呪本の話を聞くこと。そして呪本を回収すること。呪本っていうのはね、そのままの意味。呪われた本の事で、登場人物が自分のストーリーに不満を持って、その不満が暴走した本のこと。不満が強ければ強いほど精神に対する攻撃が強くなり、最悪の場合死に値するらしい。呪本は人の心の隙間に入り込むんだ、ちょうど四季のような人に。  四季は毎日頑張ってたんだ、寝る間も惜しんで。  でもね、一日のうちのわずかな寝ている時でさえ安心できなくなったみたい。何度も目を覚まし、うなされることが多くなった。俺は少しでも安心して欲しくて抱きしめて寝るの。悪夢ごと、四季を不安にさせているものごと包み込んであげられるように。四季は寝言でも頑張ってた。ほとんど後悔を、自分の反省を呟いていたけど。 「彼らのために何も出来ないオレが、生きている意味なんて何処にもない」 「生きていることが申し訳なくて辛い」 「あの時オレはどうすれば良かったんだ?全部オレが悪いのか…」 「なんの為に生まれて、生きているんだろう」 「生きていてごめんなさい。ごめんなさい。ごめんなさい。ごめ………」 寝ているのに、泣きながら謝る四季をキツく抱きしめて、大丈夫だよ、大丈夫って優しく頭を撫でる。俺は目が覚めるまでずっとそうしていた。  呪本の回収と登場人物の不満の解消で変わり果てていく四季のことを見たくなくて、やるせない気持ちを執筆に当てた。元々人気作家として忙しかったことも相まって俺たちの生活は少しずつすれ違った。  そうそう、サイン会が地方であって外泊したときのことなんだけどね。最悪な事が起こっていたんだ。  なんだと思う?そう、四季が自殺未遂をしていたんだよ。家につくと、四季がベランダの手すりにいたんだ。慌てて連れ戻して四季の気持ちを聞いた。だって納得できなかったんだよ。  何で俺がいないところに勝手に行こうとするの?  俺たちはずっと一緒だったのに。何をするときも、どこに行くときも全部一緒にだったのに。

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