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第9話
その日は、俺の新刊の発売日だった。
四季はどんなときでも、俺の新刊の発売日に必ず新刊を買ってくれていた。買い逃すことが無いように毎回予約してからね。
どんなときでも、新刊の感想を言ってくれてた。どこが良かった、どこに感動した、どのセリフの言い回しが良かった、どのキャラが気に入ったってね。
四季は俺のファン1号なんだ、っていつも言ってくれた。
嬉しかったんだ。創作のモチベーションにもなってたし。スランプのときとか四季を思い出して頑張って書いているんだよ。
そういえば四季は知っているかな?四季が読むと思って俺はハッピーエンドしか書かないようにしてるってことを。
四季に後味悪い思いなんてしてほしくないからって理由で。四季が好きな幸せで誰も悲しいことにならない物語。
だけど、四季は俺の本を読んで昏睡状態になった。俺の本が呪本になったんだよ。
俺の書いた四季をモチーフにした小説で倒れたんだよ。四季を主人公にしたから、四季と主人公を限りなく似せたから。だから呪本と四季との波長があったらしい。
そんなこと今となってはもうどうだっていいけど。
毎日毎日すがった神なんて存在しないことを知ったよ。
もしも存在しているのなら神は不平等なんだ。あんなに素敵で優しくて、凄くすっごく良い人な四季を助けてくれなかった。
平等なら四季を真っ先に救ってくれたはずだろう?
昏睡状態にすることが神にとって四季への救いであるなら話は別だけどね。
俺は今、凄く後悔している。もっと四季の状態を良く見ていたらって。もっと自分の作品を見ていたらって。もっと呪本について詳しく知ってたら。自分の人生 に不満を持つような登場人物出さなければ、四季をモチーフにしなければって。
あれ?可笑しいな。冷静に話せているつもりだったのに。泣くつもりなんてなかったんだけどな。つい、感情が昂ってしまってね。…続き話すね。
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