かろうじて羽織っていただけのシャツをずらして、凌は露わになった肩に噛り付く。　ギリッと音を立てて、直接骨に響くような痛みが走った。 「……　いたッ……　歯形つけないでよ……」 「痛いくらいが好きなくせに……」 　そう言って凌は、噛んだ部分に舌を這わせた。 　――　痛いのが好きなんじゃない。 　欲望で一杯にして、それしか考えられない程に高めて、一気に解放した時の身体中を駆け巡る快楽が欲しい。　淫楽に耽っていれば、忘れられる気がするんだ。 　凌は肩からまた鎖骨へと、吸い付きながら唇を移動させていく。　そこから徐々に降りていき、胸の片方の尖りを指先で弄りながら、もう片方に舌を這わした。 「……　う……　ッ……」 　ギリギリとフェンスに押さえ付けられた手首が痛くて声を漏らしたのに、僕が感じていると勘違いして、凌は嬉しそうに上目遣いで僕を見上げて、尖りをキツく吸い上げる。 「んぁ……　ぁ……」 　片方の尖りを散々弄んで、もう片方の尖りを口に含む。　凌は胸を愛撫するのが好きみたいで、いつもこの行為を何度も何度も繰り返す。 　唾液に濡れた肌が春風に撫でられて、そこだけが冷たくて身震いする。　何度も執拗に愛撫された胸の尖りは、赤く熟したように腫れていた。 「もう……　同じとこばかり……　しつこい……」 　押さえ付けられていない方の右手で、凌の前髪を掴んで胸から僅かに引き剥がせば、唾液に濡れた尖りが外気に曝されてまた身体が震えた。 「伊織……　寒くないか？」 「寒いよ」 　今さら何を聞いてんだか……　と、不機嫌な声で答えると、また唇を塞がれて抱きしめられた。 　凌がズボンの下から硬く盛り上がっている部分を、僕の身体に押し付けて腰を揺らし始めた。 　咥内に侵入してくる凌の舌がさっきより熱くて、角度を変えて重ね直された唇の隙間から漏れる息が荒い。 　キスをしながら、脚の間に凌の膝が割り入ってきて、僕の中心を刺激する。 「……　っ、あ……」 　朝から電車の中で高められた熱が身体の奥で燻っていて、そこはさっきから簡単に再燃してしまっていた。 「……　凌……　早く……」 　もっと直接的な刺激が欲しくて、しつこく重ねられる唇を強引に離して、凌に訴えた。