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―― 日常の快楽(9)
「分かってる。 そんな焦んなよ」
あの人に抱かれる時のように、僕をもっと乱れさせて。 わけが分かんなくなる位に、淫らな行為に没頭したい。 あの人の事を思い出すだけで、身体が疼いて堪んないんだ。
それなのに、凌は焦らすように、まどろっこしいキスを続けながら、僕のズボンのベルトをゆっくりと手をかける。
「…… ん、ぁ……、凌…… はやく……」
顔を背けて唇を離し、ベルトをなかなか外そうとしない凌の手を掴んだ。
「ふん、そんなに我慢できねぇのかよ」
凌はそう言って、漸く僕のベルトを外してズボンを寛がせると、下着ごと一気に膝の辺りまで引き摺りおろした。
熱い猛りは、腹に付く程硬く勃ち上がっていて、早くと催促するように、蜜口から雫を零し続けて濡れていた。
外気に曝されて、ふるりと震えるそれを掴み、凌は顔を傾けて舌を這わせていく。 流れた蜜を舐めとるように。
時々、じゅるっと音を立てて、蜜を吸われると、腰から背中にかけてゾクゾクと痺れが走る。
僕を見上げてくる瞳が、気持ちいいか? と、訊いてくる。
突然先端から熱い咥内に包まれて、僕の中心は脈打ち、また大きくなった。
待ち望んだ快感に震えるそこに、凌は舌を絡め、根元を手で扱きながら顔を上下させ始める。
「ん…… ふ…… ぁッ……」
早い動きに、一気に身体中の熱が高まっていく。
凌の右手が腰に回り、滴り落ちる僕の蜜を絡めた指先で、後孔の窪みをなぞる。
「あっ……、」
僕は快感に背中をしならせて、後頭部をフェンスにくっつけた。
顔を上下させながら、窄まりに指をつぷりと挿し込まれ、中を押し広げるように動く指先が、僕の好きなところを刺激する。
「や、ぁ…… っ、そこ……」
頭を凭れさせたフェンスが、ガシャガシャと屋上に響いて、僕の声がかき消されていく。
―― ああ、凄くいい。
もっと、もっと、快楽で頭の中をいっぱいにして。
高められた熱は、出口を探して身体中を駆け巡り、中心へと向かって行くのが分かる。
「あ、あ…… も、イく…… !」
言った瞬間、凌に促すように先端を吸い上げられて、閉じた瞼の裏に閃光が走った。
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