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—— 愛執(4)
形の良い爪が、情事の跡を辿るように肌を掠めていく。
その爪で、胸の尖りを弾かれて、痛みにも似た快感に、淫らな僕の身体は悦んで震える。
「…… っ」
「こんなに赤くして…、ここも沢山愛して貰ったんだね?」
ふつふつと湧き上がる感情を抑えたような声は、静かだけど怒気を帯びている。
ギリッと爪の先で抓られて、思わず息を飲んだ。
「誰に抱かれたのか、教えてくれないのかい?」
「—— あぁーーっ」
また、指先が後孔を撫でたかと思うと、一気にその指を突き立てられて高い嬌声をあげてしまった。
潤滑剤も何も付けない指先が侵入して中を掻き混ぜるように動かされて、引き攣ったような痛みを覚える。
「…… あ…… ッ……」
それなのに、僕の身体を僕よりも知り尽くした、その指先が一番感じるところを刺激してくると、痛みなど忘れて、甘い痺れに酔ってしまいそうになる。
僕は堪らずに、父さんに抱き付いて、身体を密着させた。
美しい腹筋に、僕の猛りをぴったりとくっつけて、腰を揺らして擦り付く。
「…… あぁ、父さん……」
身体中に快感の波が押し寄せる。
だけど、欲しいところまで届かない刺激に、もっと先をと強請ったけど、父さんは簡単には、それを許してくれなかった。
「…… 伊織、言いなさい」
耳元で、低い声で問われて、舌先が耳の中へ侵入して、頭の中に水音が響く。
父さんは、後孔に埋めた指を、僕の好きなところに当たらないように、わざと焦らしながら動かした。
「…… や……、ぁ……ッ」
焦らされて、身体の奥が疼いて、悲鳴のような声を漏らしてしまう。
「—— ッ…… 凌だよ…… 速水凌」
欲しいものの前では、抗うことなんて僕には出来なくて、敢え無く凌の名前を吐いてしまった。
「…… ふぅん、またあの不良か」
そう言って、父さんは指を後孔から引き抜いた。
急に空っぽになった身体の中が、寂しくて寒くて堪らない。
「伊織、欲しいかい?」
低い声が、甘い言葉を囁いて、僕は何度も頷いた。
「じゃあ、自分で挿れてごらん」
言われて、僕は自ら腰を浮かせる。
早く欲しくて堪らなかった。
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