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 ―― 愛執(7)

「――っ、あ」  そのまま窓際の広いデスクの上に乱暴に降ろされて、弾みでバランスを崩してしまい後ろに手を突いた。その衝撃でデスクが揺れて、ブランデーのグラスが倒れてしまう。  残っていた少量のブランデーが零れて、デスクを濡らしながら床へ落ち、ガラスの割れる音がした。  父さんはグラスが割れた事など気にも留めず、僕の膝裏を押し上げて脚を大きく開かせた。   「ッ、ああっ」  ぐっと深い処まで突かれて、体がずり上がり、後頭部が窓ガラスに当たる。  父さんは僕の腰に腕を回して身体を引き戻し、そしてゆっくりと律動を始める。  段々と速くなっていく動きに合わせて、ギシギシとデスクの軋む音が部屋に響く。  突き上げられる衝撃で、また身体がずれないように、僕は必死に父さんの首にしがみついていた。 「…… 綺麗だ……」  耳元で低い声に囁かれ、唇を塞がれる。 「…… っぅ、…… っんん……っ、」  激しい律動に、重ねた唇の隙間から漏れてしまう声を止められない。 「お前は……、私だけのものだ……」  唇が離れると、さっきよりも動きが激しくなる。  机の端に揃えて置かれていた、ファイルがバサバサと床へ落ちる音が聞こえた。 「…… 私から、離れることは…… 許さない」  低い声で紡がれた命令。 だけどそれは、甘い響きを含んでいて、…… 僕は、閉じていた瞼を薄く開けた。  少し長めの父さんの前髪を指で掻き分けると、切なげな憂いを含んだ瞳に見つめられた。。  そして、「…… 愛してる」と、囁いてくれる。  ―― ああ…… やっぱり……。  だから、僕は名前を呼んであげる。 「…… 何処にも行かない、…… 離れたりなんかしない。 ――  愛してる…… さん」  父さんは、僕のことを絶対に手放さない。 僕の実の父親という人が来た時も、僕を何処にもやらないと言ってくれた。  父さんは、僕を愛してくれている。 僕の中に、僕にそっくりな母さんを見ているから。  僕は、それを分かっていて、それでも父さんを愛してる。  あの時から、父さんも、僕も、きっと狂ってしまったんだ。  ―― 父さんが僕を初めて犯した、あの夜から。  身体の最奥に父さんの熱い欲が広がるのを感じて、僕は目を閉じた。  その欲の中に孕んでいるのは、母さんへの愛。  ―― 僕へのものじゃないって、僕はちゃんと知ってるよ。

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