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―― 愛執(22)
「じゃあ王子様、お姫様も無事に逃げたことだし、さっそく愉しもうじゃないか」
男は、僕に馬乗りになったまま、カチャカチャと音を立ててベルトを緩め、前を寛げた。
「…… な、何?」
男は、そこから取り出したモノを、僕の目の前に近付けてくる。
何を要求されているのか…… 分からない訳ではないけれど、だけど、いくら何でも本気でやらされるとは思えなくて、僕は男の顔を見上げた。
「さっき、これからって時にお前に噛みつかれたから萎えちゃったんだよ。 責任取れよな」
「…… え?」
「ほら、起きろよ」
そう言って、立ち上がった男の前に無理矢理に跪かされた。
「あぁ、殴られて鼻血でちゃったな。 可哀想に……」
男は、その血を人差し指で拭い、僕の唇に擦りつけ、「似合ってるぜ」と、口角を上げた。
「口を開けろ」
下の前歯と血で染めた下唇を一緒に男の指で押さえられて、無理矢理口をこじ開けられる。 指で押さえられた唇が歯に食い込んで、否応なく口を開くしかなかった。
「―― ぅッ」
男の先端を、唇に押し付けられる。
嫌だ…… こんな事、死んでもしたくない。 口に入れられたら絶対噛み切ってやる。
「言っとくけど、ちょっとでも噛んだらぶっ殺すからな。 お前も、あの女もな。 逃げても、すぐ見つけ出してやるからな」
男の卑怯な言葉に、僕はただ下から睨み付ける事くらいしか出来ない。 悔しくて、悔しくて、泣きそうだけど、必死に堪えていた。
「ほら、咥えろよ、出来るよな?」
男は、僕の目の前で自分のモノを扱きながら、指に押さえられて半開きになっている僕の唇にまた押し付けた。
僕の口元で、それは段々と硬度を増してきていた。 独特の雄の臭いに、顔を背けたくなる。
「…… ほら早く。 あの女がどうなってもいいのかよ」
男の脅しに抵抗する術もなく、僕は…… 大きく口を開き、男のそれを咥内に迎え入れた。
「…… ん、いい子だ。 そのまま顔を動かしてみろよ」
どうしていいのか分からなくて、言われた通りにただ顔を前後に動かした。 口の中で、どんどん形を変えていく塊を、噛み切ることすら叶わずに。
「おい、もっと舌とか使えねえのかよ、下手くそ」
そんな事言われたって、どうすればいいのか、分からない。
舌に感じる苦味と鼻をつく臭いに、気持ち悪くなるけれど、それでも……。 菜摘ちゃんが酷い目に遭うよりはマシだと思って、とにかく早くこの行為を終わらせればいいと、それだけを考えていた。
「あー、もう下手くそだなっ!」
僕のやり方がマズいのか、男は苛立ちながら僕の髪を掴んで、激しく腰を振り始めた。
「――ッ、――ん、ンンッーーッ」
口の中いっぱいになった塊に喉奥まで突かれて、何度も嘔吐きそうになった。
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