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 —— 愛執(37)

「…… っ…… ふ……」  深い口づけに、全ての力が弛んでいく。  それだけで、絶頂に達しそうなほどなのに、また屹立を上下に扱く手に、もう何も考える事が出来なくなってしまう。 「ん…… ぁ…… っ」  後ろに宛てがわれた熱い切っ先が、窄まりに円を描くように動かされて、腰が震えてしまう。  そして耳元に囁かれる。 「愛してる」  昨日までは、確かに本当の父と子だった。  父さんは、僕のことを本当の子供のように愛してくれていた。 僕も…… 僕も、優しくて大きな愛で包んでくれる父さんが大好きで……。  父さんは……  母さんのお腹の中にいるのが、自分の子供じゃないと分かっていたのに、母さんと結婚して…… 父さんは、今も母さんを愛していて……。 「——あっ…… う、んっん……」  入り口を押し広げるように挿ってきた熱い切っ先が、じわじわと細い路を押し開き、僕の中を父さんの形に変えていく。 「あ…… っ、あぁーーーッ!」  途中で一呼吸置いた後、一気に奥まで貫かれて、衝撃に背中を反らして高い声を上げてしまう。 「ん、ぁ…… っ、あっ、」  大きな手に腰を掴まれて引き寄せられると、もっと奥まで中が埋まった気がした。 「苦しいか?」  そう訊かれて、小さく頷いたけど、でも…… なんだか……。  自分の中で、父さんとひとつになれている事が、何故か嬉しくて。  ――僕は父さんに愛されているんだ。そう強く実感できる。  それに……ひとつになっている間は、僕は父さんに見捨てられる心配はないんだ。 「だいじょうぶ」  僕がそう応えた途端、また唇を塞がれた。  なんだか、熱くて優しいキスに、気が付いたら涙が溢れていた。 「…… ん、…… ふ……っ」  挿し入れられる父さんの舌に、自分の舌を絡めると、そこから甘い感覚が広がっていく。  僕も……、  僕も父さんを、愛してる。  きっとそうなんだ。 だから、こんなに涙が溢れるんだ。  舌を絡め合って、お互いの唇を啄ばんで、また深く重ね合わせて。  そうしながら、律動は早くなっていく。 「あっ……」  一旦動きを止めて、父さんのものが外に出て行くと、空洞になった中が寂しさにひくついているのが分かる。  もう痛みも感じなくて、ただ、ただ、父さんの形を身体の中で感じていたかった。  身体を反転させられて、仰向けにさせた僕の足を大きく開いて、その間に父さんの身体が割り入ってくる。 「——あっ…… ぅ…… ん、あぁ……」  また奥まで貫かれて、身体の中いっぱいに父さんを感じて、僕は喜びの声を上げていた。

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