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—— 偽り(33)
唇を離して、僕の顔を覗き込む男に、疑問に思うことを、そのまま訊いてみた。
「僕が男だから、売れないの?」
男は、面白そうに少し吹き出して笑う。
「男でも、お前みたいなガキのを、好んで買うやつもいるよ」
きっと高値で売れるだろうなと、男はほくそ笑む。
「……じゃあやっぱり、いつかは売るつもり?」
「このビデオが出回って、お前だとばれたら、お前の親父さんも色々困るだろうから、それで脅迫するって手もあるけどな。どっちにしても、金のなる木には違いねえ」
男の言葉に父さんの顔が過って、不安な気持ちが押し寄せてくる。
「何だよ、心配しなくてもお前が俺から逃げなけりゃ、このビデオが出回ることはないさ」
逃げる? 僕はいつも自分からここに来ているのに? それでも男は僕が逃げると心配しているんだろうか。
「もしかして、僕のことを好きなの?」
だって、それしか考えられない。僕が逃げないように、そんな安い脅しをかけてくるなんて。
だけど男は、僕の言葉を笑い飛ばした。
「ぶっ! ははっ! んなわけないだろ? まあ、お前のここ、女よりも具合い良いしな。 今は手放したくないってことだ」
そう言って、男は腕を僕の腰に回し、まだ濡れている後孔を指でなぞる。
「……ん」
男の指を敏感に感じて、淫らな僕の身体は、男の腕の中でピクリと震えた。
「ホント、淫乱だな」
男は笑いながら、入口をなぞっていた指をつぷりと挿れて、ぐるりと掻き回す。
まだ中に残ったままの男の精液が、ぐちゅぐちゅと音を響かせた。
「……ぁ、あ……っ」
それだけでもう、僕の身体は熱くなり、さっき達したばかりの中心が頭をもたげる。
僕は男の胸に顔を埋めて、その先を強請る。
「もう一回、して」
「ああ、もう、お前ってホントに……!」
男は怒鳴って、男の胸に埋めていた僕の顔を荒々しく掴み、上に向かせた。
怒っているのかと思ったのに、男は優しい瞳で僕を見つめていた。
目を閉じると、柔らかいものが一瞬唇に触れて離れる。
「俺、ショタコンじゃなかったはずなんだけど……」
ボヤくように言って、また唇が重なって、男の舌が咥内に入ってくる。
今度はミントじゃなくて、男がさっき吸っていた煙草の味のするキス。
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