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 ―― 偽り(41)

「……あの男が恋しいか?」  唇が耳を掠めて、落とされた言葉に驚いて父さんの顔を見上げた。  僕を見つめる情欲に濡れた瞳の奥に燻る嫉妬の焔を感じる。 「……違……っ」  否定しようとした言葉は、首筋に噛み付かれた痛みで喉の奥へと飲み込んだ。 「……あッ……ぁ……っ」  噛まれた首筋に舌が這わされて、痛みが快感に変わり身体中が熱くなっていく。 「こんな風に酷くされると、あの男を思い出して感じるのか?」 「……ふぁあッ、ちが……ぁ」  背中を抱き締めていた手が腰に降り、パジャマの上から窪みをなぞられて、それだけで腰の奥が疼く。 「ここに何度あの男を受け入れた?」  優しい声音。だけどその言葉は僕を責めている。それなのに汚れた僕の身体は熱く火照り、パジャマの下で硬く勃ち上がったモノは先端を濡らし始めた。  父さんは口角を上げて、フッと笑い声を漏らす。 「そんなに良かったのか? あの男のセックスは」 「違……っん」  かぶりを振りながら言いかけた言葉は、父さんに唇を塞がれて熱い舌に絡め取られて消えてしまう。 「……ん、ふ……ぁ……っん」  すごく不思議な感覚が僕の身体を支配していた。  男との情事を父さんに咎められているのに、身体と気持ちがこんなに昂ぶっていくのは何故なんだろう。  湿った水音を立てながら施される舌の愛撫に僕の咥内は熱で蕩けて、その快感が身体全体に広がっていく。  熱い舌を絡め合わせて応えれば、僕がどんなに父さんに逢いたかったか、どんなに触れて欲しかったか、伝えることが出来る気がしていた。  口端から零れる唾液を舐め取りながら、父さんは僕の顔をじっと見つめ艶然と微笑む。  僕は今どんな顔をしているのだろう。 父さんにどんな風に思われているんだろう。  パジャマのボタンが外されていく。  父さんの視線が、僕の顔から首筋、胸へと、下りていく。 「…… ん、アアッ!」  指先で硬くなった胸の尖りを撫でられて、身体が震えた。 「もうこんなに硬く尖らせて。 熟したトマトのように紅くさせて……」  そう言って、父さんは胸元から上目遣いに僕を見上げながら、舌先で胸の尖りを転がした。  言われた言葉に羞恥を感じて体温が上がり、敏感になっている部分を執拗に愛撫され、腰から背中をぞくぞくと快感が駆け上がっていく。 「……あぁっ、」 「そうやって、腰をくねらせて、男を誘ったのか」 「――違……っ、あああ!」  パジャマのズボンの上から硬く勃ち上がった半身を擦られて、吐精感が一気にこみ上げてくる。  もうとっくにこれ以上ないくらいに硬く張り詰めた先端から零れる先走りで、パジャマの上からでも濡れそぼっているのが分かる。 「もうこんなに濡らして……」 「や……」  それを父さんに知られるのが恥ずかしかった。 「……あの男を思い出しているのか」 「違う、ちが……っ、アァッ!」  男のことなんて、全然何とも思ってもいないのに……   そう言おうとしたけれど、父さんにベッドに押し倒された軽い衝撃で、言葉は途中で消えてしまう。 「何が違う。お前は私でなくても、感じたんだろう? そして何度も抱かれる為に男に逢いに行ったのだろう?」  僕を見据える瞳は、情欲と嫉妬に濡れていて。その瞳に見つめられると、もう何も言えなくなってしまう。  父さんの言っていることは間違いじゃないのかもしれないけれど、でもそうじゃないと心の中では否定し続けていた。  一気に下衣を剥ぎ取られ、うつ伏せにされて、両手で強く腰を掴まれて引き寄せられる。  僕はシーツを握りしめて、次に与えられる快楽をただ待つだけだった。

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