173 / 330
―― 陽炎(25)
佐々木先生は、昨日と同じように、半身に催淫作用のあるローションを直接垂らし全体に塗り広げ、先端の蜜口からも中へと流し込んだ。
冷たい液が、中の細い道を通る感触に身震いするけど、時間が経てば、それが熱を持ち始めることを、僕は嫌と言うほど知っていた。
後孔も、挿れられた指にローションを内壁に塗り付けられ、遠隔操作のできる小さなローターを、奥深くに埋め込まれた。
『放課後まで外したら駄目だよ』
悪魔のような低い声で言われて、半身の根元はシリコンのリングで戒められた。
―― そうして五限目の授業が始まった。
手に付いたローションを擦り付けられた胸の先も疼いていて、少しでも動くと制服のシャツが擦れて、唇から吐息が漏れる。
触りたくて堪らないのに、触れれば、もっと我慢出来なくなるのは分かりきっている。
体内から湧き起こるムズムズとした痺れと熱。半身はビクビクと脈打ち、根元の戒めに締め付けられる。
そんな状態で、前を向いていられなくなって俯けば、先生は許さないとばかりにローターのスイッチを入れた。 すぐにオフにするけれど、蚊の鳴くような小さな音が聞こえた瞬間、全身から汗が噴きだした。
「……っう、う」
唇から堪えきれずに荒い息を吐いてしまう。
「おい、伊織、大丈夫か?」
隣の席から慎矢が小声で聞いてくるのに、頷くだけで精一杯だった。
なのに……、靴音が前から近付いてきて、僕の席の前で止まる。 俯いたままでいると、机の端をトントンと叩く指が視界の隅に見えた。
「次の問題、前に出てやってみなさい」
冷や汗がこめかみから伝い落ちてくる。
「鈴宮」
名前を呼ばれて、漸く見上げると、先生は意地悪く微笑んでいた。
「さっき、昼休みにやったのと同じだよ。出来るだろう?」
(よく言う……昼休みに勉強なんてしていないのに)
もう、立ち上がる事すら出来ないと分かっているくせに。
あまりの馬鹿ばかしさに、逆に可笑しくて笑いそうになるよ。
「……でき……、ません」
口を開けば、荒い息と共に上擦った声が出てしまいそうになるのを堪えながらそう言うと、先生はニヤリと口角を上げる。
「しょうがないね。また放課後復習に付き合うから、準備室に来るように」
「先生、伊織は具合が悪いみたいなんです。保健室に行った方がいいと思うんですけど」
慎矢が横から、助け舟を出してくれたけど、それは僕を余計に追い詰める事になってしまう。
「そうなのか? そう言えば顔が赤いね。熱は?」
白々しい言葉と共に、先生の手が額に触れる。
「……っ」
額に触れた手のひらが、するりと滑るように頬を撫でていく。思わずびくっと身体を震えたのと同時に、半身がまた締め付けられた。
「どうなんだ? 保健室に行くか?」
優しい素振りで聞いてくるけど、それが余計に怖い。
「……大丈夫です」
そう応えるしかなかった。
ともだちにシェアしよう!