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―― 陽炎(26)
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「……ぁ……っ、ん、いや……ッあ」
「何が嫌だ。そんなに善がってるくせに」
「……だ…って、も……とって……あああっ」
準備室のデスクに上半身を預けている僕を、佐々木先生は後ろから容赦なく突いてくる。 同時に、前に回された手に先走りでぐっしょりと濡れた屹立を扱きあげられて、ガクガクと下肢が震えた。 ギシギシとデスクが軋む音と、繋がった部分からぐちゅぐちゅと厭らしい音と、僕の悲鳴が部屋中に響いてる。
五限目の授業の終わるチャイムと共に、僕は教室から出て、今にも身体が崩れ落ちそうになるのを堪えて、先生を追いかけた。
今日の授業は五限目までで、あとはSHRがあるだけだったけど、もう終わるまでは耐えられなかったから。
なのに先生は、なかなか根元を戒めているものを取ってはくれない。
「取って? 人に物を頼む時の態度じゃないね」
「――ッ、はやっ……くっ!」
「じゃあ、言い直しなさい」
耳元に低い声で囁かれ、耳朶を噛まれて、全身が大きく震えた。
「……お、ねがい……イきた……」
途切れ途切れに、そこまで言い掛けたところで、突然部屋のドアが二回ノックされるのが聞こえて、僕は言葉を呑み込んだ。
先生の動きも一旦止まる。
「……せんせい……今……」
「……しっ」
誰だか分からない訪問者をやり過ごすつもりなのか、先生は僕の口を手で塞いだ。
だけど、その後すぐドアは、ドンドンと激しく叩かれて、僕は焦って先生から離れようとしたけれど、後ろから押さえ付けられたまま身動きが出来ない。
もしかしたら慎矢なんじゃないかって、一瞬頭を過ぎって、心臓の音がドキドキと煩い。
「先生! 開けてください! そこに居るんでしょう?」
聞こえてきた声は、僕の知らない声だった。
「先生!」
まだ、変声期が始まったばかりかと思うような、ハスキーな高い声。
一年生だろうか。
「開けてください。僕です!」
ガチャガチャとドアを開けようとする音に焦っている僕とは違い、先生の表情はいつもと同じ人形のよう。
僕の唇を塞いでいた手を外し、「さっき言いかけた続きを言いなさい」と、口角を上げながら囁く。
「……え……?だって……」
「これ、外して欲しくないのか?」
そう言いながら、先生の指が根元にくい込むリングをなぞる。
僕には、ドアの外にいるのが誰だか分からないけど、先生はこの状況を明らかに楽しんでいる。
僕が戸惑っていると、先生が律動を再開して、またデスクの軋む音が激しく響き始めた。
「――ッ……ッ、せんせ……ッ」
「早く言え」
いつも神経質過ぎるくらいに生徒との関係がバレないように気を遣うのに、今日の先生の行動は理解できないけど、それが何故かなんて考えている余裕はないくらいに、僕の限界はもうとっくに過ぎている。
「お願い……です。 いきたいからっ、こ、れ、外してくださ……っ」
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