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 ―― 陽炎(27)

 言い終わるのを待たずに、根元に食い込んでいたリングが外されて、堰き止められていた欲が解放されて、先端から溢れだした。 「あっ、あっ、あぁっ」  それがまだ全部出切らないうちから、腰の動きを早められて、達した余韻に浸る間もなく、また追い上げられていく。  下肢はビクビクと痙攣して立っているのもやっとで、後ろから突かれる衝撃に、ただ机にしがみ付き、揺さぶられているだけだった。  嬌声があがりそうになるのを、必死に堪えているのに、「声を我慢するな」と髪を掴まれて頭を後ろに引かれる。 「――ッあ……んんぅ……ッ……」  机の軋む音も、この会話だって、ドアの外に居る誰かには、はっきりと届いているはずなのに、声まで聞かせようとする意味が分からない。 「ほら、もっと大きな声で啼け!」 上体を後ろに引かれて背中が弓なりに反る。 胸に回された手で尖りを弄られて、もう片方の手にまた半身を扱かれ強制的に勃たされる。 「ああーっ、あ、あ、っ、せんせ……ッ……!」  身体の中の一番感じる部分を的確に責められて、目の前に閃光が走る。  確かに先生も僕の中に欲を吐き出したのを感じたのに、先生は動きを止めることなく、また律動が激しくなっていく。 「あっ……ッも、いやぁ……っ……んッ……」  僕の放ったものは机を汚し、先生の放ったものは動くたびに中で水音を立たせ、そこから溢れて内股を伝い落ちていく。  激しくて、熱くて、そして考えることを放棄して。  そうだ、この瞬間こそ、僕が求めているものだった。  いつの間にか、ドアを叩く音も、外から必死に先生を呼ぶハスキーな高い声も、聞こえなくなっていた。 **  準備室の窓から西日が入り始め、遠くに部活の生徒達の声が聞こえている。  ドアの外に居た生徒は、諦めて帰ったんだろうか。  乱れた制服を適当に整えて、部屋から出て行こうとする僕を、先生が後ろから肩を掴んで引き止める。 「身だしなみは、キチンとしなさい」  そう言いながら僕に向かい合うと、上二つまで開けていたシャツのボタンをとめて、ネクタイを締め直された。  いつものように冷めた表情で。さっきまでの先生とは別人のよう。  こっちは、もう出るものもないくらいに、何度もイかされてフラフラなのに。 「……一人で帰れるか?」  その問いかけは無視して、僕は準備室を出た。  授業が終わって、そのまま出てきたから、教室に鞄を取りに行かないといけない。  教室に向かおうと進行方向を見やると、数メートルほど先の壁に一人の生徒が凭れて、こちらをじっと見ている。

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