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 ―― 希望(2)

「――っ、あ……っ」  ずっと待ち望んでいたあの繊細な指が、僕の中に触れている。そう思っただけで、中の襞が悦んで父さんの指に絡みつくように締め付ける。  身体は、こんなに悦びに満ちていくのに……、なのに……、どうしてだろう。心の中にポッカリ空いた穴が埋まりそうにない。 「ん、うぅ……ああぁッ……!」  父さんの指が僕の好きな処を掠めて、思わず高い声をあげているのに。触られてもいないのに、完全に勃ち上がった僕の先端からは、前触れの雫が零れ落ち始めているのに。  さっき、父さんにキスをされて、父さんの手に身体を触れられている僕を見ていた慎矢のあの表情と、玄関の引き戸を閉める時、最後に見えたあの瞳が、脳裏に浮かんで消えなかった。  心は今の状況についてきていないのに、先走りは次から次へと零れて下生えまでぐっしょりと濡れている。その滑りを纏った指が肉襞を撫で、細い道を開き、あの一番感じるところを押し潰すように刺激する。 「ああッ、ん……ぅ……っ」  その快感に足が震えて、崩れ落ちそうになるのを堪えて、目の前の壁に額を擦り付けた。 「今、何を考えている?」  背後で立ち上がった父さんが、耳朶を食みながら低く囁くその声にゾクゾクと背中が粟立っていく。 「……あ、っ、なに、も、考えてなんか……」 「嘘つきだね、伊織は」  言葉と同時に、父さんの指が外へ引き抜かれていく。 「――あっ……」  その瞬間、僕の中はそれを拒むように、勝手に父さんの指を締め付け、無意識に腰が揺れる。 「身体は、こんなに正直なのに」  冷ややかな声と同時に、背後で金属音と衣擦れの音がする。 「伊織、此方を向きなさい」  言われた通りに、振り向くとすぐに唇が塞がれる。 「……うぅ……っふ……」  上顎や舌の裏側と、僕の感じるところに舌でねっとりと愛撫されると、頭の中が朦朧として、身体の力が抜けて膝から床へと崩れ落ちてしまう。 「伊織……」  と呼ばれて見上げれば、目に被さる僕の前髪を、父さんの手が掻き上げる。 「その目……」  低く呟くような声は、最初は聞き取れなかった。 「……え?」 「……お前もやっぱり……沙織と同じ目をしている」  ――沙織……。母さんと同じ?

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