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 ―― ESCAPE(58)

「……あ……んッぁ……せんせ……」  まだ成長途中のハスキーな声で喘ぎ、柔らかく撓る身体にどんどん煽られていく。  上目遣いに見上げれば、熱を孕んだ濡れた瞳と視線が絡む。  その瞳を見つめながら、唇を窄めて頭を上下させる速度を速めていく。  そうしながら、双珠に手を滑らせて柔らかく転がしてやると、伊織の身体が作業台の上で小さく跳ねた。 「……あ、っ、だめ……」  どこか危うい色気を漂わせた声でそう言って、伊織は俺をじっと見つめていた。その瞳を縁取る長い睫毛が濡れている。 「……何がだめ?」  俺は、一旦唇を離し、そう聞いた。 「……そんなにしたら……、も、イきそう……」  切なげに眉根を寄せて、起き上がろうとする伊織の唾液と先走りで濡れそぼつ半身に指を絡め、 「イって、いいよ」    と、言いながら、少し強めに上下に扱いていけば、伊織は快楽の声を上げながら、白い喉を反らせた。 「ん……あっ、ぁっ、せんせ……ッ」  唇をキスで塞ぎ、その声を奪う。  俺の愛撫に感じてくれていることが、嬉しかった。  ガクガクと脚を震わせながら、手の中の伊織の屹立がドクンと波打ち、先端から白濁を迸らせた。 「……ッふ……ッぅ……」  重ねた唇の隙間から、伊織は甘い吐息を零しながら、俺の腕の中で身体を弛ませていく。  トロトロと、まだ熱を吐き続ける伊織の半身をゆるゆると扱きながら、その甘い咥内を貪った。  舌を絡め合わせて、吸い上げる。  歯列をなぞり、頬の内側や、上顎を撫で、お互いの唾液を混ざり合わせて。  僅かに唇を解けば、伊織は荒く熱い呼吸の下から、「先生……」と掠れた声で俺を呼び、上目遣いに見上げてくる。  室内の温度に汗ばんだ肌に、伊織の放った白が散っている姿が扇情的であり、そして美しい。俺は暫く茫然とその姿に見惚れていた。 「先生も脱いで」  唇が僅かに触れる位置で、そう言いながら、伊織は俺のシャツのボタンを外していく。  俺もまた、部屋の温度と情欲の熱気に汗ばんで、着ているシャツを湿らせている。  伊織はボタンを全部外し終えると、俺の首筋に唇を寄せてきた。 「……伊織……汗を掻いてるから……」 「……構わない。僕も同じだもの」  そう言いながら伊織は、俺のシャツの前を開き、汗ばんだ肌にキスを落としていく。 「……っ」  掌をシャツの中へ滑りこませ、唇が肌を掠めるたびに、背中が粟立っていく。  扇情的な誘いに、今すぐに細い身体を掻き抱いて、壊してしまいたい衝動に駆られた。  そんな俺の欲情を知ってか知らずか、華奢な指が俺のベルトを外していく。  暑くて静かな美術室に、金属音がやけに大きく響く。 「早く……先生と、ひとつにりたい」  そのひとことで、脆い箍は簡単に外れてしまう。  壊さないように、大切に、ゆっくりと進めたいと思っていた理性など、跡形もなく崩れ落ちるのを感じていた。

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