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―― ESCAPE(60)
肌に散った白濁を掬い取り、指に纏わせて小さな窄まりに挿し入れていく。舌先で愛撫した其処は、しっとりと薄紅に濡れ、俺の指を難なく受け入れた。
指を曲げ、ぐるりと回転させながら細い路を開いていく。
「――あぁ……っ!」
華奢な身体が作業台の上でしなやかに跳ねて、肌を伝う汗が真珠のように煌めきながら飛び散った。
見つけた好い場所を執拗に擦り、唇が奏でる艶やかな声を聴きながら、俺の半身は痛いくらいに硬く勃ち上がり、伊織を欲していた。
――『今までの事を全部憶えておけばいい』
さっきそう言ったくせに、俺は……あの父親のことなど忘れてしまえ。と、心の中で強く念じていた。
「……挿れるよ……」
黒い感情が胸の中で渦巻いているけれど、それでも君に伝わるだろうか。
「愛してる」
ただ一人の人の愛情が欲しくて、その寂しさを紛らわせる為にだけ、身体を開いて快楽を求めていた……、伊織。
そんな君を堪らなく愛しいと思っていると、分かってくれるだろうか。
この想いが、たとえ一方通行だとしても、愛しているから……。だから全部欲しいと思うのだと、伝わるだろうか。
「……先生……キスして」
俺へ伸ばされた指に指を絡めて、俺を映す潤んだ瞳と見詰め合いながら、桜色の唇に口付けた。
確かめ合うように、お互いの咥内を舌で探り、交わらせて、俺は熱くなった切先を薄紅に熟した後ろに捩じ込んでいく。
「……あっ……ッ……」
先端を潜り込ませた瞬間に、合わさった唇の隙間から、伊織は上擦った声を漏らした。
熱く蕩けた襞に吸いつくように包まれて、俺は息を呑む。
繋がった身体の中も、口付けを交わす吐息も、蕩けてしまいそうに熱い。
ゆっくりと腰を進めていけば、伊織の中が俺の形に広がっていく。
きつく絡みつく肉襞が、もっと奥へと誘い込むように蠢いた。
中の熱さとお互いの身体を包む室内の熱気に、また汗が噴き出して肌を濡らす。
こめかみから流れた汗に目を眇めれば、瞼の上を伊織の舌が拭い取るように動いた。
「先生……、奥まできて」
「伊織……ッ」
濃艶な瞳に見詰められて、どうしようもなくゾクゾクとした感覚が腰から背中を駆け上がり、囁かれた言葉に、堪らず細い腰を鷲掴み、男の欲望を小さな身体の最奥まで一気に突き入れた。
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