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第3話
突然の出来事に何も言葉を発せないでいると高瀬くんが寂しそうに微笑んだ
そんな彼に自然と近寄っていくくーちゃん。体が触れそうなくらい近くに。
成長とともに体も魅力的になったくーちゃん。そうされると大抵の男が彼女に恋するのだ。彼女は無意識だけど
「…ろうくん!どうしてここに?」
「こっちに俺だけ戻ってきたんだ。こっちでやりたいことがあったからさ」
「そっか。元気そうで良かった。家は?高校は?どうするの?」
「うん。明日から行くよ。家はこの家ではないけど近くのアパートに暮らすんだ」
「そうなんだね。一人暮らし?」
「そうだよ」
二人の会話が進むのを俺は黙って見つめてた。相変わらず可愛いくーちゃんともっとカッコよくなった高瀬くんはとてもお似合いで凄く複雑な気分だ。
「久しぶりに会ったんだし二人でゆっくりしてきたら?チビは…まだ高瀬くんと一緒にいたそうだね…。くーちゃん。チビのお散歩お願いしていい?俺先に帰ってるね」
そう言ってチビを預けて俺は足早にそこを立ち去った。
二人が恋人になってそして将来は結婚して…安易に想像がついて胸が痛くなった
「ただいま」
「あれ?おにい?チビちゃんは?」
「くーちゃんに預けて来た。高瀬くんもいたし」
「高瀬くん?」
「うん。あぁ。覚えてないか…チビの始めの飼い主さんだよ。こっちでやることあるって転校してくるみたい」
「そっか…チビちゃん…その人の方がいいのかなぁ…寂しいなぁ。おにい。酷い顔してるけど…」
「大丈夫。くーちゃんがチビ連れて帰ってくると思うからお迎えしてくれる?俺部屋にいるね」
そう言って妹に背を向けると急いで部屋に入りベッドに潜り込み泣いた。
「…あぁ…やっぱカッコいいなぁ…好きだなぁ」
忘れられなかった大切な恋。本当に好きだったんだな。だって
「涙…止まらないや…」
それから泣き疲れて寝ちゃって陽も傾き始めた頃。視線を感じたんだ。まだ覚醒しきっていない俺はチビが戻ってきたんだと思っていつもするみたいにそっと撫でた
「チビぃ…高瀬くんのとこ戻らなくていいの?」
目を閉じたままそう語りかけると俺の手のひらに頭を擦り付ける
「チービー。擽ったいって…」
そのままチビの首をぎゅっと抱き寄せる。
「ん〜…チビぃ…俺ねチビと一緒でね高瀬くんのこと大好きだったんだ。可笑しいよねぇ。同じ男なのにねぇ。くーちゃんと付き合うのかなぁ…くーちゃんね。凄く人気者なのに今彼氏いないんだってぇ。」
「そうなの?」
「うん。俺は丁度いい男よけになるみたいでさぁ。良く散歩付き合ってくれるんだぁ」
「男避け?」
「うん。くーちゃんもねぇまだ高瀬くんのこと好きだと思うんだよ」
「え?」
「すっごくお似合いだったよねぇ。二人が結婚して子供産まれたらすっごく可愛いだろうなぁ…ふふっ…寂しいけどすっごく楽しみだよぉ…」
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