7 / 18
ふてくされるわんこ(第2話『わんことおそろい』3)
「体育会系が脳筋 って考えは古いんだよ」
「ごめんって」
「あー、傷ついたなあ。すっごく傷ついたなあー」
そう言っているけど、朝倉の言葉は棒読みだ。心から悲しい訳ではないのだろう。でも言い方が悪かったよなあ……。
「ごめんね、朝倉」
朝倉は俺の胸に頭を押しつけている。
「よし、よし」
俺は朝倉の背中を叩いた。朝倉は無言で俺の胸に頭をぐりぐりしている。
かわいい。ふてくされた大型犬みたいだ。
「お願い聞いてくれたら、許す」
「なんだよ、言ってみ」
「眼鏡かけて、俺の上に乗っかって」
「え」
「腰いっぱい振って、あんあん喘いでくれなきゃ、許さない」
「ええ、めちゃくちゃな要求するなあ」
さっきのじゃ物足りなかったのかな。少し腰が痛いし、どうしようか。
「その代わり。俺も眼鏡かけてするから」
「ほんと!」
眼鏡の朝倉に抱かれるのか。俺は想像した。いつもよりSっ気がある感じになるのかなあ。悪くない。
「橋本、おい橋本」
「何?」
「うれしそうだな。俺、がんばらないとなー」
「待って。まだいいって言ってないよ」
「おまえの顔、『お願いします』って表情だよ。よっと」
朝倉は俺を抱き起こした。俺の首筋にキスをする。
「朝倉って、俺のことなんでもわかるんだね」
出かけているとき、本当は手をつなぎたかった。俺が言わなくても朝倉には伝わった。
「ああ。恋人だからな」
朝倉は微笑むと、中指で眼鏡を押し上げた。眼鏡のレンズが光る。見慣れない姿に、俺の胸は高鳴った。
恥ずかしいから、ときめいたのはないしょにしておこう。でもきっと、朝倉はわかっているに違いない
【第2話おわり】
ともだちにシェアしよう!