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おさわりし放題ゲーム(第3話『わんことゲーム』1)

俺はゲーム画面の右上に表示されているスコアが気になっていた。3000点超えた……。数字の色がシルバーからゴールドに変わる。 朝倉の腕の中に、俺は収まっている。 朝倉は俺の肩に頭を乗せて、携帯ゲーム機を動かしている。 「久しぶりにやったけど、スコアが落ちないな。どこから敵が出るか覚えてる」 二人羽織みたいな格好で、朝倉はシューティングゲームをプレイしているのだ。 「これが最終ステージ」 「もう!? はや!」 「覚悟しとけよ」 俺は、唇を人差し指で撫でた。 「うん……」 突然、ゲーム画面の左右から、羽が生えた卵がいっぱい出てきた。 「あ。これ、かわいいね。マシュマロみたい」 俺は画面にふれた。 「ちょ、さわんな!」 「へ?」 朝倉の機体が、俺がさわったところに高速移動した。と思ったら、卵にぶつかり、爆発した。軽快な音が鳴る。 画面には、でかでかと『GAME OVER』と表示された。朝倉が震えている。持っているゲーム機が揺れた。 「このゲーム、タッチパネル対応なんだよ……」 「ごめん、ごめんね!」 俺は顔を動かして、朝倉のほうを見た。朝倉、目が怖い。 「さっきのは敵に決まってるだろ」 「ごめん。いままで出てきた敵とは全然違ったから、おもしろいなと思ってはしゃいじゃった」 「ゲームのマスコットキャラとでも思ったのか、え!?」 「ほんと、ごめん! 俺、ゲームよくわかんなくて。さわったらだめなんて知らなかったんだよー」 「あー。3000回キスできるところだったのにー」 朝倉はゲーム機をちゃぶ台の上に置いた。 「ははは……残念だったね」 ゲームをプレイする前、朝倉は言ったのだ。 『なんかご褒美ないと楽しくねーな。橋本。ゲームクリアしたときのスコアの点数だけキスしよう』 『いいよ!』 まさか、四桁までいくとは思わなかった。 「キスしたくないからゲーム中断させたのか?」 「ちがうって。でも、3000回は無理だって」 「3000秒ならいいか?」 朝倉はにやりと笑みを浮かべて、俺に顔を近づける。 「えー、3000秒?」 俺は視線を上にやって頭のなかで計算した。 「は、50分!? 無理、無理! よだれいっぱい出る」 「俺が拭いてやるから。あらー、濡れちゃいましたねーって。まあ、いいや。別のゲームで遊ぼう」 「他のもあるんだ?」 俺は、朝倉の実家から届いた段ボール箱を見た。 お届け物に、さっきまでプレイしていたゲームが入っていた。弟さんが遊ばなくなったゲームらしい。他に食材がいっぱい入っていたけど、ゲームソフトやゲーム機がまだあったかな? 朝倉は俺をぎゅーっと抱きしめた。 「朝倉?」 「まずは充電しないとな」 朝倉は、俺のお腹を撫でている。俺は朝倉の手にふれた。 「まさか、別のゲームって……」 「橋本おさわりし放題ゲーム」 「えー」 朝倉は俺のお腹を指でつっついた。 「お、電池があるぞ。70パーセントくらいだな。夕飯を食べたからかな」 「ちょっと。俺、おさわりし放題じゃないよ」

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