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俺よりかっこいい(第4話『わんことごろごろ』2)
朝倉は俺の上に乗っかった。
「橋本」
「はい」
「覚悟しろ」
「はい……」
今夜は朝倉に逆らえない。
「あ、あ……」
「もっと声、出して」
「む、り。恥ずかしい、あ」
俺と朝倉はひとつにつながっている。あのあと、朝倉はすぐに俺を貫いた。朝倉は俺の両方の膝裏をつかんでいる。この体位はいつも通りなんだけど……。
「あ、さ、くら……なんで、今日は、あ……出すの、遅いんだよ。ん……ん」
「こうやって、ふ、ゆっくり、弱く擦れば……」
「あ、あ……」
「腰振ることが、できんだよ……いつまでも、な!」
「や、あ、んっ」
『ゆっくり弱く』と朝倉は言っているけど、絶妙なタイミングで深く俺の奥をひと突きする。不意打ちでなかを強く擦られるから、俺はいつもより喘いでしまう。
「だめ、だって、こういうの、あ」
「は、わんこに優しくしないから、こうなるん、だ、よ」
「あ、ん。ごめんなさ、い……」
涙で視界が|滲《にじ》んでいるから、朝倉がどんな表情をしているかわからない。声からしてもう怒っていないだろう。だから、俺はほっとしていた。
俺は朝倉を抱きしめていない。シーツをつかんでもいない。力が入らない。何度もなかを擦られて、頭がぐちゃぐちゃになっている。
「はし、もと。これからは、俺にいじ、わるしない、か?」
「はあ、はあ……」
朝倉が動きを止めた。
「橋本?」
「はあ……」
一瞬、体が浮き上がるような変な感覚がした。急に怖くなって、俺は朝倉の両腕をつかんだ。
「おい、橋本?」
「あ……大丈夫。刺激が、強かっただけ……」
「橋本……」
朝倉が体をつなげたまま、俺を抱きしめた。俺の涙を指で拭ってくれた。心配そうに俺を見つめている。
「あのときみたいになったんだろ?」
「うん……」
俺は初めて後背位で抱かれたとき、軽いパニックに陥った。そのときのことを朝倉は言っているのだろう。
「はあ。なんかうまくいかねえな」
「ごめん。俺……すぐにへたっちゃうから……」
「おまえじゃなくて、俺が悪いんだよ」
朝倉は俺の髪を撫でた。
「朝倉?」
「今夜は大切に優しくしないとって思っても、いつも激しくしてる。ごめんな。自分勝手に抱いて。あー、くそ。好きすぎて自分をコントロールできねー」
朝倉は悔しそうに自分の頭をぐしゃぐしゃにした。俺はその手を取った。
「朝倉。俺、激しくされてもいい」
「は、何言ってんだよ」
「それだけ俺を求めているってわかってる。だから少しくらい、ひどくされてもいい」
俺は、朝倉の頭を引き寄せて静かに何度もキスをした。
「橋本。危ないこと言うな」
「えー。きゅんとする言葉じゃないか」
俺は両手で朝倉の頬を撫でた。
「朝倉。俺のなかに出して」
「え」
「今夜はまだいってないだろ?」
「橋本……」
「ん……」
朝倉は俺に深くくちづけした。
「橋本。おまえのこと、かわいいって思ってたけど、それだけじゃないな」
力強く抱きしめられた。朝倉の体はしっとりと汗ばんでいた。
「かっこいいよ。俺より」
「ありがと」
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