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第6話
乳首を吸うと優月幽霊がまた喚いた。
「やめて、やめて、やだー」
優月がどんなに叫ぼうが暴れようが、幽霊であるのだから俺の行動を妨げることはできない。
「湯橿さんやめて。キスとか、乳首とか。お願いですからそんなことしないで」
懇願する声すらかわいくて、俺はかえって燃えていた。
俺の舌は肌を濡らしながら徐々に腹にむかって移動する。
尖らせたそれで臍のくぼみをベロンと舐めた。
「わっ」
なんだ、ここもいやなのか。
「もう、やだ」
優月幽霊は自身の無力さに茫然となって、へなへなと絨毯の上に舞い降りた。
力なく肩を落としている。
「僕、どうにかなっちゃいます」
「もうすでにどうにかなっちまってんだろ。これ以上のどうにかなんてあるのか」
「それは……」
幽体離脱してる状態よりどうにかなるなんて、死ぬくらいなもんだろう。
俺は来ていたシャツを優月の前で乱暴に脱ぎ捨てた。身体が熱くなって来ていたのだ。
「な、なにしてるんですか」
「お前だけ脱がしてんじゃなんだからな……。俺もエンジンかかってきたぜ」
「エンジン?」
「まさかお前、着衣プレイが好きなのか。コスプレとか?」
色々言われてもピンと来ていないらしい。その純朴さがかわいい。
優月本体は相変わらず上を向いて仰臥している。
まったく反応のない相手を抱くのはもちろん初めてだ。
「ヴァージンならマグロなのも珍しくないけどな。ここまで無反応なのはかえって面白い。ま、俺のテクニックで開発して感じさせてやるよ。そのうち眼が覚めるかもしれないから、それこそ懇切丁寧にな」
「いいですってば」
おとなしく寝入ったままの本体を抱き込み、俺は体温を移すようにして優月の上に重なる。
胸と胸を合わせる。
密かな温み。
これはやっぱり死んでないよな。
「いやいや言ってるが、お前が誘ったようなもんだからな。こうなったのは同意の上だろうが」
「ええっ」
「だいたいお前、俺が悪い奴だったらどうする気だったんだよ。ホテルの男一人の部屋に平気で忍んでくるし。『うちに来て』なんて軽く誘ってくるし。あんな簡単に家の鍵のありかを教えちまったりして、お前ちょっと無防備すぎるぞ」
優月にとっては相当に悪い奴なのは俺だろうけど。
「だって緊急事態だったから」
誰でもいいから縋りたいってとこだったのだろう。
おもむろに俺は寝ている優月のジャージのウエスト部分に手をかけた。
おとなしい身体からはすんなりとジャージを脱がすことが出来る。
「うわー見ないで。やめてー」
悲鳴をBGMに、期待通りにブリーフを引き下ろした。
かわいらしい優月のモノを俺は指に摘まみ上げる。
これだけ愛撫を続けているのにやはり反応はしていなかった。
「触らないでください」
「気持ちよくねぇか」
「分かりません」
「こう、なんだ、その……ムズムズするとか、腰の奥に熱いものが込み上げて来るとか、そういうのも感じねえのか」
「だから、今の僕、幽霊の僕には、感覚がないみたいなんです」
べそをかいてる幽霊の姿はかわいそうだったが、俺は指を舐めて残酷な宣告をする。
「悪いなぁ、優月。俺はもう限界だ」
見ているだけで煽られる白い姿態。
そして艶めかしさを感じさせる肌触り。
俺は激しく興奮していた。
指を濡らした唾液を後ろの小穴にせっかちになすりつける。
「へ?……な、なに?」
覗き込んだ幽霊のほうがおぞ気あがる。
まさか男同士のなんたるかも知らない訳はないだろうな。
「反応はなくても挿入は出来る」
言いざま無防備な足を抱え上げ、股間の位置を調節した。
さすがに意味が通じたのか、茫然となった唇からは憐れな泣き声が漏れる。
「そんなことしないで……」
「悪いな優月。無駄に力入れるなよ。俺は上手いから大丈夫だ。任せろ」
気休めにもならないことを言って俺はおのれの欲望を優先させた。
当然だが本体にはまったく力が入っていないので、思った通りすんなりと導き入れられる。
お、すげえ。
なんだ、これ。
こんなぴったりな感じがあるのか。
こんなに心地よい感じが……。
今まで抱いた中でもピカいちの肉体だった。
温かくて、柔らかくて、最上級のフィット感。
内心で舌を巻く。
仮死状態の本体は俺の性器をすっぽりと包み込んでくれたのだ。
溜まらない快感に包まれる。
このままずっと繋がっていたいと切望する。
愛しくて、優しくしてやりたいと心から思う。
俺は身体を深くつなげながら優月に触れるだけのソフトなキスを送った。
優月のせいで俺まで初心になっちまったのだろうか。
それもいいかもしれない。
俺が、らしくもなくセンチな気分に浸っていると、唐突に変化が訪れた。
性器がじわりと締め付けられたのだ。
この感触は……。
優月?
ひるみながらも俺はMAXの欲望で思わず腰を突き上げる。
「……っ」
優月幽霊の薄く白い影が目の前でぶれた。
本体の胸のあたりから内部へと、白い気配がシュルシュルと入って行く。
「優月っ!」
ハッと気がつけば、俺の腹には確かに固いものが当たっていた。
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