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第4話 泣いてたまるか畜生と泣く
意を決して、ドアを開ける。
「こんにちは、ハルキです――」
「いらっしゃい」
その声を聞き、その姿を見たとき、つま先から頭のてっぺんまで、冷たい電流が駆け上がった。
「ほら、入っておいでよ。どうしたの、突っ立って」
「な……んで……」
ベッドに座った要先輩は、赤いロングスカートの中の足を組み、さらりと金髪をかき上げる。
「修也は目立つから、やっかみもあってあることないこと言われてるけどね。君も、噂になりつつあるよ。……嘘じゃなかったみたいだね」
立ち上がった要先輩は、俺の腕を引いて、ベッドに倒した。
「こういうのは禁止だって、さんざん言われたはずだな? なのになぜだ?」
要先輩の声が野太くなった。俺は完全に混乱して、なにも考えられず、問われるがままに答えてしまう。
「……お金が、ほしくて……うち母さん一人で、ずっと苦労してきたんです……そんな時に、知らないおじさんが、一時間で何万円もくれるって……最初は、意味わからなくて……それからは、こういうものなんだって……」
「へえ。じゃあ、相手があたしでもいいんだ?」
要先輩は、いつの間にか笑っていた。
「……え?」
「女の格好してても、性欲は男じゃん。需要と供給があるでしょ? お金もあげる」
「な」
要先輩が覆いかぶさってきて、俺のスカートの中央に膝を置いた。
俺の両肩も、手のひらで押さえつけられてしまう。
「ずっと、ハルキくんとこうしてみたいと思ってた」
「なに言ってるんですか……修也先輩が知ったら」
「修也は知ってるよ」
要先輩の一言一言に、思考が停止しかける。
その隙に、要先輩の手が俺のスパッツの中に滑り込んで、腰骨のあたりにじかに指が触れた。
「あっ!」
「ん? ハルキくんて処女?」
俺は、また絶句した。なぜ、それくらいで悟られてしまうのか。すべて見透かされているような気がして、空恐ろしさで体が固まる。
「え、君、ほんとに? こんな仕事してて? ……ふふ」
なにがおかしい――と思ってから、半分はカマかけだったのだと気づいた。畜生。
「つまり君は、今まで、『男役』だけやってきたってことだ。意外! あはははははは」
顔が熱い。ひどく赤面しているのが自分でも分かった。畜生。泣いてたまるか。畜生。
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