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第149話
side 渉
優一のマンションからの帰り道、渉は咲也に会いたくて仕方がなかった。
優一を追い続けてきた咲也を自分は知っている。
その姿を応援してきた自分もいた。
それなのに、咲也に恋したからそれら全てを投げ捨てさせて、片鱗を見せるななんて傲慢だと思った。
優一を想う咲也も優一を讃える咲也も受け止める。
そう思っていた。
咲也はそのままでいいと思っていた。
だから、あの時言ったんだ
俺と優兄を比べて良いと……
今はまだ負けてるし全然足元にも及ばないけど、そんな俺に咲也は言ってくれた。
優兄より俺の方が好きだって
一人で優兄を目の敵にして咲也の意地にムキになって本質的なものを見落としていた。
寮に戻ったら謝ろう
自分の弱過ぎた意思に反省する。
比べられる現実に覚悟が足らなかった。
ちゃんと咲也の事が好きだって伝えたい
咲也が好きって言ってくれなくても今後、俺は好きだと言い続けよう
俯いていた顔を上げ、何度も失敗しては繰り返す過ちに今度こそはと気持ちを固め、渉は足を走らせた。
その時、黒塗りの高級車が渉の真横に止まった。
「渉!久しぶり‼︎今からあなたに会いに行こうとしてたのよ!こんなとこで会えて良かったわ」
後部座席の窓が開き、澄んだ高い声で話かけてきた人物に渉は足を止めて息を呑んだ。
「寮に戻るとこ?話があるの。送ってくから車に乗りなよ」
紅が引かれた唇が微笑みながら車に乗ることを勧めてくる。
「え……っと…」
混乱から動揺し、言葉が詰まっていたら後部座席の扉が開き、中から名門女子高の制服を着たすらりとした背の高い女の子が出てきた。
肩まで伸びた真っ直ぐの黒いストレートなサラサラの髪は白い肌を際立たせる。二重の瞳で鼻筋も通り、小さく薄い唇には人の目を惹く紅が引かれていた。
「なーに?反応薄いわね〜。婚約者に向かって失礼よ」
side 渉 終わり
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