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第153話

「麗美、用事って何?」 気持ちが落ち着き始めた渉はようやく口を開いた。 「あ、うん。私のお母さんと渉のとこのおばさまが私達も高校生になったから、そろそろ婚約披露をしようかって言ってるの」 「……」 「私はいつでもいいんだけど、渉は生徒会の仕事忙しそうだし、どうする?」 柔らかな笑顔で嬉しそうに話しを持ちかけてくる麗美に渉は身の振り方が分からなくて硬直した。 「パーティーするホテルは目星が付いてるの。私に任せてくれるなら招待状も料理も全て準備するよ。どうかな?」 婚約披露をしたいと、にわかに感じさせる麗美に渉は再び混乱し始めた。 「ちょ、ちょっと待って!そんな大それた事しなくて良くない⁉︎まだ高校生なんだし!」 「そうかしら。私達、もう高校生よ?世間一般でも丁度いい時期じゃない。お兄様の勇さんなんて中一で婚約披露してるし!」 「勇兄は有希ちゃんに押し切られて…って、言っても、結婚するのは今年の冬やっとだよ?婚約披露から10年も掛かってる!」 「………それはそうだけど」 渉の必死過ぎる抗議に麗美は少し悲しそうに目を伏せて口籠もった。 重苦しい空気が流れ、渉もしまったと口を閉ざした時、麗美が深妙な声で言った。 「世間一般ではお披露目しても可笑しくないわ。ズルズル先延ばすのは世間体にも良くないって分かるでしょう?」 「……う、ん…」 「大学卒業したら勇さん達みたいに結婚するんだし、いい頃合いだと思うの」 「……まぁ。確かに…」 本当に結婚するなら時期的にはそうだろうと曖昧に返事をする渉に麗美がパァーッと笑顔になった。 「それじゃあ、進めるわよ!お母さんやおばさまに伝えるわね!」 「え、えぇ!!、」 「楽しみ!実は皆んなでドレスは何色にするか話してたのよ!ピンクは可愛いけれどありきたりだからグリーンや紫にしようかなって。おばさまは真っ赤なドレスを勧めてくるんだけど、渉はどう思う?何色が似合うと思う?」 キラキラと目を輝かせては嬉しそうに話す麗美に渉はダラダラと汗を流して今、この場での最良の対策を頭の中で巡らせた。 だが、そんな答えなど浮かぶはずもなく、押し切られるように小さく答えてしまった。 「……考えておくよ」

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