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第154話
「ぅゔ〜〜……」
寮の自分の部屋へ着いた渉は頭を抱え、叫ぶ事は愚か、とんでもない非常事態に唸り声を上げてベッドの上へ倒れ込んだ。
これはヤバい……
麗美のこと、完っっっ全に忘れてた
咲也に夢中になり、浮かれ過ぎて己に婚約者がいる事を忘れていた渉は頭をバンバンベッドへ打ちつける。
ふわふわの感触に虚しいぐらい痛みはなくて、今度はあらゆる後悔の念と共に叫び声を上げた。
「ぐぅ、わぁぁあぁーーーーっ!!」
髪をぐしゃぐしゃに搔き乱し、困惑していたらズボンの後ろポケットに入れていた携帯電話が鳴る。
携帯電話を手に取り、相手を確認するとそれは咲也からで渉は青ざめた。
流石の阿保で馬鹿な俺でも今は咲也と会話できるほどの神経はないと、電話が切れるのを半泣き状態で眺めた。
暫くして電話から音が止み、渉は大きな溜息を吐きながらベッドの淵へと腰掛けた。
麗美と咲也
考えると心が重く、頭痛が始まる。
麗美には本当に申し訳なくてなんと言えばいいのか分からない。
今だからこそ分かる麗美が本当に自分を好きでいてくれてる事が……
深く大きな器で自分を想ってくれている現実に渉は麗美を想うと罪悪感でいっぱいになった。
俺を好きだと告白してきた彼女にただ、都合が良かった相手な為に婚約者にした。
正直、歳を重ねて婚約破棄されると思っていたし、されてもいいとすら思っていた。
だから……
他で女の子と遊んでいても麗美の事なんて思い出しもしなかった。
街ですれ違った時まで……
あの時、ちゃんと断れば良かったんだ。
好きだと告げられた時
最後は自分を選べと懇願された時
彼女が俺に本気だと気が付いたあの時、自分は本気になれないと……
のらりくらりと嫌な事を後回しにし、時が流れて成るように成ると思っていた浅はかで狡い自分を渉は後悔する。
男として、人としてちゃんと責任を負って麗美を選ぶべきなのだろう。
きっとそれが一般的に正しいのだと思う。
思うけど……
携帯電話を見つめ、渉はまた一つ大きな息を吐き出した。
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