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第155話
「渉の奴、そんなに怒ることないだろ!この馬鹿っ!!」
電話をしたにも関わらず、出てくれない渉へ咲也は手に持つ携帯電話を睨みつけながら、悪態ついた。
素直になれなかった自分が悪いのは分かっている。
だけど、なにも情事の最中に放り出さなくても……
「変に意地っ張りなんだよ。馬鹿」
眉間に皺を寄せ、吐き捨てるように呟きながらも咲也は渉を想った。
いつも真っ直ぐ自分を見つめて追いかけてくる渉に心が動かされ、温かくなる。
好きだと言われると嬉しいし、大きなあの手に触れられて幸せだと感じた。
この想いや感覚を渉へも伝えてやりたい。
寮の長い廊下を歩く足を止め、ジッと地面を見つめながら、そんな考えを巡らせていた咲也はグッと拳を握りしめた。
「する!素直になる!!」
顔を赤く染め、今なら出来そうだと大きな声で一人意気込みながら決心する咲也に数人の通行人がビクっと飛び跳ね、咲也を見た。
そんな視線にも気付かないほど必死な咲也はこの情熱が冷めないうちにと、渉の部屋へと走り抜けた。
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