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最終章・第156話

「くっそ!誰から手を付けたらいいか、わっかんねー!!!」 部屋のベッドの上で未だ対処に困惑している渉は髪をぐしゃぐしゃ掻き乱しながら悩んでいた。 1、咲也にわけを話して罵られる。 2、麗美へ謝罪して婚約破棄。 3、実家に電話し、母に半殺しにされる。 最後はどの選択技も通過せねばならないのだろうが、どの順番で済ませていけばいいのか分からなかった。 何より3番目は命に関わるし、1番は捨てられる可能性もある。 そして、2番はきっと…… 「相当傷つけるだろうな……」 下手をしたら大きなトラウマを与える事にもなりかねなくて、渉は重く大きな溜息を吐いた。 そのとき部屋の扉がノックされ、同時に開かれる。 「渉!」 横柄な口調で自分の名前を呼んで無遠慮に部屋へ入ってきたのは、出来れば会うのを避けたい咲也だった。 「さ、咲也‼︎」 罪悪感から声が上ずったが、咲也はそんな事、気にも止めずに渉との距離をズカズカと縮めた。 「う、えぇっ‼︎」 グイッと、胸倉を掴まれ、引き寄せられると眼鏡越しに紅茶の瞳に見つめられる。 澄んだビー玉のように美しい瞳にダラダラとみっとまない自分の姿が映衝撃出された。 バ、バレた? こんなに早く‼︎? 心の中でどう言い訳をするべきかフル稼働で考え始めたその時、咲也の距離が更に縮まって唇と唇がぶつかった。 「っ!!」 目を見開き、一体何が起こっているのか分からなくて頭の中が真っ白になる。 そっと唇が離れていき、頬を赤く染める咲也を前に渉は呆然と立ち尽くした。 「………す…きだから…」 顔を晒してボソリと言い放つ咲也に渉は石の如く固まった。 あまりの衝撃で悩みが全て吹っ飛び、代わりに寸止めされていた性欲が蘇った。 「渉……?」 上目遣いするような視線で見つめられ、我慢出来ないと渉は咲也を押し倒した。

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