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第157話

ベッド淵に座り、カーテンから降り注ぐ陽の光を浴び、真っ白になって頭を抱える渉はベッドの上で規則正しい寝息を立てる咲也を横目に心の中で絶叫した。 俺のアホーーーー! 何やってんだよっ!! マジ死ねっ!俺、死ねぇえーーー‼︎ 只今、人生と恋愛の佳境点にいるはずなのに自身の欲望に負けた渉は昨夜の情事を酷く後悔した。 何が起こってあれ程、咲也が可愛かったのかは謎だが、性欲という名の欲が溜まりに溜まっていた身体は昨夜にて非常に満足した。だが、その代償としての懺悔感がハンパない。 ヤる事ヤって、目覚めた咲也に婚約者である麗美の話題を出して、更に婚約パーティーの話を持ちかけられたなんて口が裂けても言えなかった。 「………俺は大馬鹿野郎だ‼︎」 奥歯をギリギリ噛み締め、地を這うような低い声で自身を罵倒した時、ベッドの上で寝ていた咲也が目を覚ました。 「…ん?わ、たる?」 目を擦って自分の名前を呼んでくる咲也に目を奪われる。 色白の素肌をさらけ出し、寝起きの可愛さと色っぽさが眩しい。 「……おはよう。咲也」 後ろめたいこの事態がなければ間違いなく覆いかぶさって襲っているはずなのにと、渉は心の中で号泣した。 「……何かあった?」 「え?」 「元気なくない?」 うつ伏せで気怠げに髪を掻き上げ、澄んだ瞳を向けてくる咲也に心臓を射抜かれるような衝撃を受けた。 まるで心の中を見透かされているようで体が緊張で強張る。 「べ、別に……」 「本当に?俺に何か隠してない?」 「隠してないっ!つーか、元気だし‼︎なんなら今から咲也の事、抱くけどいい⁉︎」 グイッと距離を詰めて顎を掴み、キス出来そうな距離で冗談を言ったら、咲也は顔を赤く染めて視線を伏せた。 「……」 「……」 「…………別にいいけど」 「……へ?」 待てど暮らせど拳が飛んで来なくて、不思議に思っていた時、意表を突いた返答に渉は目を見張った。 「したいなら別にいいけど……」 紅茶色の瞳が熱を孕み、恥ずかしそうに小声で告げてきた承諾に渉はくらりと眩暈を起こした。

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