159 / 222

第159話

「前から阿保だ阿保だと思っていたが、ここまで阿保とは計算外だ……」 最愛の伴侶に呼び出された猛はその夜に時間を作って寮まで赴いてくれた。 ざくろの部屋で渉の悩みを聞き、大きな溜息を吐き出す。 「お前な〜……。さすがに俺も麗美とはちゃんと清算してるって思ってた。母さんが今度婚約披露するってドレス大量に取り寄せてたぞ…」 「……ごめんなさい」 猛は自分とざくろの前で正座をして小さくなる弟に天を仰いでまた一つ、大きな溜息を吐いた。 麗美は厄介だ なぜなら、渉を心から愛してるから 門倉の婚約者問題のときも多少気は揉んだが、あの二人のときは当人同士に恋愛感情がないという問題がクリアだったからまだマシだった。 「母さんに言うしかねーだろ」 「………俺に死ねと?」 「………」 青い顔でカタカタ震えて涙を滝のように流す渉に猛は瞳を半分閉じて呆れたように説教をした。 「だいたいお前が婚約なんて簡単にするからだろ?好きでもないのに。俺、言ったよな?後悔すんぞって!」 「だって、だって〜!あのときはまだ子供で咲也とこんな関係なるって思わなくて、しかも、麗美は本当にいい子だし、母さんとも仲良いし!」 わぁわぁ泣きながらどうしようもない弁解をする渉に猛は参ったと、腕を組んでソファにもたれかかった。 「やっぱりここは麗美に正直に話して、向こうから婚約破棄を申し出てもらった方がいいんじゃないか?つーか、父さんもこの件に関しては相当キレると思うから覚悟しとけよ」 九流家はとても人情深く、愛情深い。 麗美がその気でなければ、別に事なきを終えたであろうが、誰がどう見ても彼女は渉にぞっこんで、尽くしに尽くし抜いていた。 つまり…… 「半殺しは決定だな」 ふむ。と、頷きざま呟く猛に渉はうわ〜んっと大声で泣き叫んだ。

ともだちにシェアしよう!