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第6話

「ヤバイな・・・」 案の定、遅刻した咲也は車から降りると学校の門を潜って全速力で生徒会室を目指した。 息を切らせてエレベーターに乗り込むと、走ったことでほんのりと汗を掻く。 上に羽織っていたダウンを脱いで、エレベーター内にある姿鏡にて自分の身嗜みを整えた。 Vネックの深いえんじ色のニットにカーキ色のダメージジーンズを履いた今日の服装は咲也のお気に入りだ。兄に会えるとおめかしをした咲也は眼鏡のフレームを押し上げて乱れた髪を指先で整えた。 最上階へ近付くこの瞬間が胸を高鳴らせる。 生徒会室の前へ立つと緊張感と逸る気持ちから扉を叩く事もせず、部屋の中へと入室した。 「遅れました。すみません」 謝罪を口にしながらパタンっと扉が閉まる頃には室内にいた顔見知りの人間達以外の視線が絡みついてきた。 自分と背丈のあまり変わらない黒い髪と瞳を持つ、一際目を引く男に咲也は目を見開いた。 あまり見つめ過ぎると意識を全て持っていかれそうになる程の不思議な魅力を放つ人物にそういえばと以前、渉が写真を見せてきた事を思い出す。 あいつは確か、九流の次男の恋人って渉が言ってたな 写真を介して一度見ていた事もあり、咲也は直ぐに冷静さを取り戻した。 名前は確か…… 西條 ざくろだったか…… 次に高身長の亜麻色の髪の男へ目を向けた。 嫌な目をする。 これが咲也のこの男に対しての印象だった。 去年の春、一度、兄恋しさに寮へ押し寄せた咲也はこの男と会っていた。 二宮 神楽(にのみや かぐら)。 今もそうだが、去年の春もこの男は自分へ物珍しいオモチャの様な好奇心の瞳を向けてきた。 容姿の整った人を狂わせそうな危険な香りを放つ男は少し兄と雰囲気が似ていた。 それはかなりの高得点だが、相当な黒さを感じて警戒心を持つことにした。 そして、この考えは変わらないなと視線を逸らした。 そして……… 白木 綾人 透き通る白い肌に蜂蜜色の瞳と髪が印象的で性別不明の容姿は愛らしく、咲也は釘付けになって固まった。 「咲也、遅かったじゃん!」 逆に多数の人間から見惚れられている咲也に渉が親しげに声をかけてくる。その時、自身の肩へ触れようとしてきた渉の手に驚いた咲也はその手を思い切り叩き落とした。 瞬時にしまったと心の中で罪悪感が込み上げたが相手が渉と分かるやその罪悪感も直ぐ様消え失せた。 そして、綾人へ見惚れた自分が許せない苛立ちを渉へと八つ当たりした。 ポケットから除菌ウエットテイッシュを取り出して手を拭き、そのゴミを渉へペシリと投げ付けたのだ。

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