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第7話

「触るな、汚い!」 冷やかな目を向けて言い放つ咲也に部屋の中の空気がピシッと凍りついた。 が、そんな不穏な空気をものともしない人物が二名。 「咲也、口を謹め」 厳しい声で自分に命じるのは兄である優一だった。 そして、もう一名。 「おーい、ゴミはちゃんとゴミ箱に入れろよなぁ〜」 呑気な声で投げ付けられたゴミを拾ってわざわざご丁寧にゴミ箱に捨てる幼馴染みの渉だ。 咲也のこんな対応にとても慣れた渉は失礼極まりない悪態も何とも思わない様子だった。 咲也は渉からフンッと顔を背けると、次に満面の笑顔で兄へと抱き着いた。 「兄様!遅れてすみません!道が少し混んでいて!あぁーーー!会いたかったぁ〜!!」 ぎゅーっと抱き着いてくる弟の頭を優一はバシッと叩くが、咲也はそんな暴力にビクともせず、うっとりとした瞳を兄へと向けた。 「兄様の匂い落ち着きます!あぁ〜堪らないっ!もう、勃ちそうだ!!」 「抱き着くな!そして、気持ち悪い発言をするな!この変態がっ!!」 「どうしてですか?兄弟なんだからいいでしょ!?」 「男兄弟はこんなキモいことしない」 クールな印象と上品で美しい容姿からは想像出来ない言動の咲也に周りが唖然とした。その時、咲也の視界に入ったのは兄の近くに立っていた恋敵。白木 綾人だった。 その恋敵に咲也の紅茶色の瞳が眼鏡を通してじとりと睨みつけられた。 「お前…」 明らかな敵意を放つと、綾人がビクリと体を震わせる。 「病院でいた奴だよな…」 病院と言うキーワードに綾人が眉間に皺を寄せた。やっぱり間違いないとターゲットを確認すると、咲也の毒舌が爆発した。 「まだ兄様の側をうろちょろしてるわけ⁉︎兄様に怪我をさせといて能天気な奴め!このブッサイク!ちょっと兄様に気に入られてるからって自惚れるな!お前なんてその辺の一時のオモチャと一緒なんだよ!オカマ野郎!!」 「………」 遠慮ない強烈な罵詈雑言を浴びせると、綾人は蜂蜜色の瞳を丸くして石の様に固まった。

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