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第9話
嫌な沈黙が周りを支配する中、優一はそれらを払拭するように笑顔で全員に呼びかけた。
「じゃあ、自分の役職と名前言ってって。意気込みも良ければどーぞ」
その言葉に一同、新たな緊張感を生み、黙り込んだが渉の兄である猛が軽く手を挙げて自己紹介を始めた。
「九流 猛。来年は三年になる。今年度は生徒会副会長をしていた。来年は会長の任務に就く。よろしく」
簡素にまとめられた無駄の無い自己紹介に皆が 拍手を送る中、眉間に皺を寄せた咲也が右手を挙げた。
「異議あり!どうして九流家の次男が生徒会長なわけ?兄様が会長に適任だと思うんですけど」
お前の下で働きたくないと、猛を睨みつける。
その反抗的かつ、流れを乱す咲也の行いに猛は何も言わなかったが、兄の優一が余計な事を言うなと、手に持っていた分厚いファイルを弟の顔面目掛けて投げ付けた。
「咲也、黙れ」
「ぶっ!!」
ファイルは咲也の顔面へ的中し、潰れた声が上げる。しかし、咲也の意見は変わらず、鼻の天辺を撫でて痛みに耐えながらながら縋る様に兄へ懇願した。
「ど、どうしてですか?誰がどう見たって兄様の方が……」
「黙れ」
言葉の途中にて威圧的な声で優一に制され、咲也は口を閉ざした。
弟の黙る姿を確認すると、優一は小さく溜息を漏らした後、残る生徒会メンバーに自己紹介するよう促した。
「西條 ざくろです。来年二年生になります。書記兼、会長の補佐です。迷惑にならないよう心掛けますのでよろしくお願いします」
艶やかな黒髪と漆黒の瞳。白い肌にピンクの唇。妖艶な雰囲気に長く細いしなやかな四肢にて先程、自分の視線をも虜にした猛の恋人であるざくろの自己紹介に一同、拍手を送った。
そして、次に…
「白木 綾人です。僕も来年二年になります。厚生委員を受け持ちます。不慣れと思いますがよろしくお願いします」
憎き恋敵、綾人の自己紹介に咲也は唇を噛み締めた。
チラリと向けた視線の先の兄は綾人を見つめては可愛い、可愛いと口パクで愛情表現に興じていた。
それに気付いた綾人も顔を赤くし、二人だけの世界を生み出そうとする姿に咲也は不快さを感じ、ゴホンッと咳払いをしてその空気を崩した。
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