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第11話
「・・・ん」
目を覚ました咲也は見慣れない天井に冷や汗を流して飛び起きた。
知らない場所で寝るなど気持ちが悪いと顔を青くする。
吐き気が込み上げ、視界が揺れた。
「咲也」
パニックに陥る自分に凛とした声が降ってきた。その声は自分がこの世で最も愛する人のもので……
「兄様!!」
顔を上げ、ソファに座る兄を見つけると咲也の視界がパァーっと色付き花をも飛ばす。
「起きたら、さっさと帰れ」
自分とは違って気の無い言葉を発する兄は視線を俯かせ、分厚い難しい本へと目を走らせた。
相変わらず絵になる人だと惚けるように息を吐くと、咲也は部屋の中を一巡した。
実家にある兄の部屋の雰囲気と似ていてバクバク鳴っていた心臓が落ち着きを取り戻す。
自分が寝ていたベッドも兄のものと分かるや気持ち悪さなど無くなって、むしろ幸せな気分に浸れた。
ボフッと、枕に顔を埋めて大きく匂いを吸い込む。兄の使うシャンプーの香りがして、胸が満たされた。
「おい。変態行為止めろ」
さっさとベッドから降りろと嫌そうに言われ、咲也は渋々ベッドを下りた。
「兄様の部屋、広くて綺麗ですね!」
「生徒会してるからな」
「少し、見て回ってもいいですか?」
「・・・・・」
無言の兄に咲也は肯定と受け取って嬉々として部屋の中を歩き回った。
ワンルームなのだが、とても広い部屋は茶色の箪笥や家具が程よく収まっている。
クローゼットも付いていて咲也は無遠慮にあちこち見て回った。
「何これ?」
箪笥の引き出しを一段ずつ開いては兄の私物を覗いていたのだが、明らかに兄の趣味ではないサイズ違いの服が数枚出てきた。
「ん?あ、それ、綾のだから触んなよ」
視線を上げた門倉が綾人の寝間着を散らかしていて注意した。
「どうして、あいつの服がここにあるんですか!?あいつ、この部屋に来てるって事!!?」
顔を真っ赤にして浮気を問い詰める彼女さながらの尋問に門倉は嫌そうに顔を顰めた。
「俺の恋人が俺の部屋に来て何が悪いんだよ」
最もな理由を吐き捨てる兄に咲也はまさかと、シャワールームへ走った。
そこには兄では絶対使わないであろうアヒルのオモチャやら水鉄砲などが籠の中へ入れて常備されていた。
それだけではなく、歯ブラシや下着までもが洗面台の歯ブラシ立てや収納箪笥に収められていた。
嫌な予感が的中し、咲也はくらりと目眩が起こす。
「兄様!!同棲してるとかじゃないでしょうね!!?」
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