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第12話

癇癪を起こしたように叫びながら脱衣所から顔を出す弟に優一は満面の笑顔で最低最悪の頼み事をした。 「あ!咲也、洗面台の引き出しにローションあるからベッドヘッドの引き出しに補充しといて!今日、綾ちゃんと使うから」 もうそろそろローションが無くなりそうなんだと呟く兄に咲也の嫉妬心が爆発した。 「嫌だ!あんな奴、部屋に入れないで下さい!!ってか、あのベッド使ってるんですか!?そんな気持ち悪いことあんな奴としないで!!!」 発狂するように怒鳴り散らす弟を優一は冷ややかな目を向けた。 「綾は俺の恋人だって言っただろ?抱いて何が悪いんだよ」 「どうせ、いつもの遊びでしょう?」 叫ぶように聞いたその問いに優一が口を閉ざした。 その空気がいつもと違って咲也は狼狽える。 いつもなら、どうでも良さそうにそうだと頷く兄が真顔で口を開こうとするのを咲也は大声をあげて告げられる言葉を阻止した。 「うわぁあーーー!!!」 キチガイのようにいきなり絶叫する弟に優一はうるさいと、手に持っていた本を投げつけた。 「お前、相変わらずやかましいな。早く帰れよ。もうすぐ綾がくるんだ」 時計を見て本当に鬱陶しそうに言ってくる兄に咲也は首を左右へ振って拒絶した。 「嫌だ、嫌だ、嫌だ、嫌だ、嫌だぁぁあーーーーっ!!!兄様は俺のなんだからぁーーーー!!!」 幼い子供のように泣き喚く咲也にげんなりしながら優一はソファから立ち上がると洗面台の引き出しから自分でローションを取りに行った。 それの封を開けてベッドへ向かい、ベッドヘッドの引き出しに補充する。 チラリと見えた引き出しの中身に咲也は顔を赤く染めた。 卑猥な形をしたオモチャが無造作に幾つも入っていて、コンドームやら使い終わりそうなローションのボトルが見えたからだ。 兄の性生活が生々しく想像できて胸が騒ついた。 そして、兄の元へ近付くとベッドへ押し倒すようにして優一に抱きついた。 「兄様……、そのローション俺と使おう?」 兄の腰に跨り、優一のベルトへ手を掛ける咲也は縋る瞳を艶めかしく揺らした。

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