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第14話
「綾ちゃん、待ってたよ!こっちおいで〜」
今日は毎週約束している週末のお泊りの日で綾人は予定通り優一の部屋へと訪れた。
いつもと変わらぬご機嫌な優一だが、いつもと明らかに違うことが一点。
自分の事を敵視しては悪態つく門倉家の次男、咲也がいることだ。
咲也は綾人を見るなり兄へと抱き付いて早速毒を吐き捨てる。
「消えろ!このブサイクっ!!兄様の部屋に入ってくるな!!」
ピッーキーンっと、石の様に固まる綾人に優一が優しく微笑んで手招きしてきた。
「こいつは置物と思って早く入っておいで」
「回れ右して帰れ!!空気が腐るっ!!」
逆に咲也は犬でも追い払うようにシッシッと、手を払う。
「……また明日来ます」
今日は勘弁してくれと、綾人が開いた扉を閉めようした瞬間、優一の厳しくも制圧するような声が飛んだ。
「綾人!」
その声に嫌そうに顔を歪めて扉を開くと、兄によって殴られた様子の咲也は頭を抑えてソファにてうずくまっていた。
「綾ちゃん。今日は約束の日だろ?」
優美に微笑み、おいでとまた一つ手招きされた綾人は小さな溜息を吐いて入室した。
「あ〜。うざっ!キモッ!普通、兄弟水入らずの場面壊さなくても良くない?空気の読めない馬鹿は本当に有害だ〜」
兄を間に挟んだ咲也が綾人へ向けての愚痴を飛ばし続ける中、優一は完全な無視を決め込み綾人へちょっかいをかけまくっていた。
かく言う綾人は青い顔でこの悪夢から覚めたいと硬直している。
「綾ちゃん。可愛い〜!好きだよ。こっち向いて」
ひたすら猫可愛がりする兄に咲也のジェラシーは滾る一方で、綾人への憎しみがどんどん募っていく。
「わっわっわっ!や、やめてよ!!」
チュッチュッチュッっと、綾人を抱き締めて顔中へキスをしては愛を囁く優一に綾人は逃げようとした。
そんな二人を目の当たりにする咲也は拳を握り締め、鋭い視線を眼鏡を通して綾人へ向けた。
「かまととぶってんじゃねーよ。このブサイク!お前なんて、兄様のオモチャの分際で一丁前に抵抗とかしてんじゃねーよ!このブタ野郎!!」
今回も脳天を突き抜けるような厳しい罵倒に綾人が固まった。
それを嬉々とした優一が綾人を押し倒してはスルリと服の裾から手を入れて素肌へと掌を這わせる。
「っ!!」
びくんっと、体を竦めて赤い顔を優一へ向けた時、再び毒が降ってくる。
「この淫乱!兄様を誘惑すんな!!仮にも弟の俺がいる前でよくそんな事できるな!?抵抗の一つでとしろよ!このド変態!!」
咲也はソファを立つとテーブルの上にあった兄の飲みかけの水が入ったコップを手に持ち、綾人の顔面へぶっかけた。
「んっわぁ!!」
冷たさに驚いた声を出す天使を見下ろし、咲也は忌々しいと瞳を歪めた。
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