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第20話

クリスマス当日、渉と咲也は生徒会役員総出でタキシードに身を包み、影の仕事を手伝うべく、学園へ来ていた。 学校内の大ホールはどこぞのホテルのパーティールームさながらの煌びやかさを放ち豪華絢爛さを誇る。 しかし、その豪華さを前に役員達は慌ただしく裏の仕事に明け暮れた。 立食型の食事が無くなれば、直ぐ様学食まで取りに行っては補充したり、食べ終わった後の食器を片付けたり、揉め事を起こしそうになる輩に止めに入り、絡んでくる生徒達を否してはあれよあれよと言う間に時間は過ぎていった。 更に、問題はもう一つ。 この飛躍的忙しさの他に綾人が咲也の嫌がらせを全身全霊をかけて受けているのだ。 「おい!ノロマ!あそこのテーブル飲み物切れてるぞ!」 先輩である綾人へアレコレ指示してはやたら偉そうな咲也に文句も言わず、要らぬ波風を立てぬよう綾人は駒鳥の如くあちこち会場を走っては懸命に働いていた。 ただ問題は、一つの仕事をこなすごとに周りの生徒達から体を不必要に触られてセクハラを受けていた。それを見兼ねた門倉が毎回綾人を守りに側へ行くのだが、咲也はそれが気にくわないと、陰湿な虐めを仕掛けていた。 綾人の足を引っ掛けては転ばせたり、頭からシャンパンを被せたりと幼稚な嫌がらせを繰り広げる。 「……そろそろ、僕もキレていいかな」 先ほど、顔面へ生クリームたっぷりのケーキを喰らわされた綾人が親友のざくろが差し出したハンカチにて汚れを拭い、怒りに打ち震えながら呟いた。 「咲也!お前、白木に当たり過ぎだぞ!」 別件の用事にて会場を離れていた優一に代わって、見兼ねた猛が注意をするも、咲也はフンッと顔を背けてはフラリとその場を立ち去った。 咲也が離れていき、げんなりする綾人は生クリームで顔や体がベタつくとトイレへと向かう。 その一連を渉はただただ黙って見ていたのだが、兄が言うように綾人は根性もあるし、性格も良さそうでかなりいい子だと思えた。 咲也に対してもかなり気は遣っているし、自分が見る限り優一へ告げ口もしなければ仕返しをしてこようともしない優しく温厚な性格の良さも浮き彫りになる。 しかし、そんないい面ばかりが見えると余計、複雑な思いに駆られる渉は大きな溜息を漏らした。 これは咲也に言い聞かせなきゃ駄目だな…… 優一の恋人云々の前に綾人があまりにも不憫だ。 そう思った渉は咲也を探す為に会場を出た。

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