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第22話
「どーも!どーも!!どーも!!!」
頬を紅潮させては浮き足立つ、咲也に買われた三人の前へ渉はニコニコ笑いながら姿を見せた。
そこに咲也の姿は勿論ない。
「さっきの馬鹿が言ってたこと、間に受けないで下さいよ〜!綾ちゃん、年末年始は寮生活だろうけどゆう兄だって寮生活だから〜」
嘘も方便と、でたらめを言っては男達を否そうとする渉は雄弁に語った。
「だいたい、あの綾ちゃんが本気で浮気相手探したりすると思います?あの天使がっスよ?咲也に乗せられ過ぎだよアンタ達。この計画は忘れてその金でパァーッと遊びにいきなよ!ゆう兄には黙っててあげるから」
黒い瞳を細め、馬鹿げた計画から引けと安易に誘導する渉に三人は残念そうに眉を顰めてやっぱりなと、溜息を漏らしながら去って行った。
あの門倉 優一を敵に回す恐れがあるなら話は別だと、いきりだっていた意気込みも萎えたようだ。
そんな後ろ姿を眺め、渉も盛大な溜息を吐くと、念の為と今度は優一目指して足を走らせた。
「ゆう兄!!」
一枚の資料片手に難しい顔で佇む優一を寮と学校を掛ける渡り廊下にて発見する。
渉はぶんぶん手を振って走り寄ると、優一は紙から顔を上げた。
「どうした?何かあったか?」
パーティーにてトラブルでも発生したのかと神妙な顔つきになる優一に渉は乱れる呼吸を整えながら首を横へと振った。
「そうじゃなくて……、咲也のこと」
咲也の名前を出すなら嫌そうな顔をする優一に渉が非難する声を出した。
「ゆう兄!いい加減、咲也にも優しくしてやんなよ!一昨日、何があったか知らないけどスッゲェあいつ荒れて……」
「いい加減して欲しいのはこっちだ。兄弟で好いた惚れたなんて近親相姦も馬鹿馬鹿しい。気持ち悪りぃんだよ。大体、俺には綾がいるし」
言葉を遮り吐き捨てる優一の言葉はある意味もっともなもので、渉は反論出来ない。ただ、少々厳しすぎではないかとは口添えてみた。
「俺が優しくしてみろ。図に乗るのが目に見えてるだろ?思わねーか?それでまた、夜這いの一つでもされてみろよ。……キショッ!!」
身震いしながらないないっ!と、自分を抱きしめて嫌悪感を露わにする優一に渉はムッと唇を尖らせ、先程の咲也の計画を告げた。
途端、真顔になった優一の表情が怒りを含む険しい形相へと変わっていった。
少し考えたあと、優一は渉へ礼を告げ、何処かへと向かっていった。
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