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第23話
忙し過ぎるクリスマスパーティーも無事に幕が閉じ、生徒会の内輪だけでささやかなパーティーが催される。
いわゆる打ち上げだ。
「綾ちゃん、海老フライあるよ!」
あーんっと、口へ運んでやる優一に綾人はガンガン自分を睨みつけてくる咲也に怯えながら硬直していた。
食が進まないらしい綾人に優一はよしよしと頭を撫でると、イチゴを差し出した。
労いの言葉や時には甘い愛の言葉を惜しみなく囁く優一に生徒会メンバーはいつもの事だと気に溜めるものはいなかったが、咲也と渉のこの二名だけは別だった。
色恋に悲しいぐらい冷酷だった優一がここまで一人の人間に甲斐甲斐しく接する姿は奇跡に近い。
咲也が見せたあの落ち込む姿に渉も納得がいった。
「兄様!兄様の好きなお寿司が…」
ありますよ!と、近寄ろうとしたとき、優一は綾人の額へとキスを落とした。
あまりに自然で止めることが出来なかった咲也はググッと奥歯を噛み締める。
口を開けば綾ちゃん、綾ちゃんと綾人の機嫌をひたすら取り続ける兄に咲也の怒りは爆発寸前だ。
「兄様!年末年始はちゃんと帰って来て下さいよっ!!」
二人の間に割って入り、兄に抱きついて綾人をさり気なく蹴飛ばす咲也は話を必死に変えた。
「あ〜。俺、年末年始は寮に残るから。父さん達に宜しく言っといて!」
にっこり笑って告げてくる兄に咲也は目を見開いた。
「ど、どうして!!?」
「別に。家へ帰ってもやる事ないし。だったらここで綾ちゃんとまったり過ごしたい」
綾人をムギュっと抱きしめる優一に咲也が大声を出した。
「駄目!絶対駄目です!!父様も母様もお爺様も兄様が帰省するのを楽しみに待ってるんですよ!?」
「んじゃ、明日顔だけ出しとくよ」
素っ気ない返答に咲也が面食らっていると、綾人が優一へと口添えした。
「ゆーいち、駄目。ご家族との時間はちゃんと、持った方がいいと思う。僕に気を遣ってるならやめて。ちゃんと実家へは帰って」
家族のいない綾人の切実な言葉に優一は無下に出来ず黙り込んだ。
それを見た咲也が一気に畳み掛ける。
「恋人もそう言ってくれてるし、兄様は予定通り帰省!ね!俺、楽しみにしてます」
良かったと、満足そうに笑う弟を優一は一瞥したあと、綾人へ瞳を向けた。
目が合うと柔らかな笑顔を作る天使に優一は咲也を放り投げて、愛おしむように頬を撫でると、ある一つの計画を頭の中でひっそりと組み立てた。
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