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第37話
始業式の日から渉の中のモヤモヤは咲也を視界に入れる事により大きく膨らんでいった。
そんな闇を抱えたまま中学を卒業し、咲也の愛して止まない兄である優一がいる立春高校へ入学を二人は遂げる。
「兄様ー!!」
晴天の空に桜の花びらが舞い散り、春風が温かい今日、立春高校は入学式を迎えた。
黒の学ランから高校生らしいブレザーへと制服を変え、咲也は満面の笑顔で優一へと抱きついた。
その無邪気かつ、美しい美貌に周りの目が釘付けとなった。
「入学、おめでとう」
抱きついてくる咲也と一緒にいた渉へ優一はお祝いの言葉を贈る。
咲也は目をハートにしてはスキ、スキと兄の胸元へ顔を埋めて幸せを噛み締めた。
逆に渉はこの兄弟を視界へ入れたくないと視線を反らせた。
「渉?」
渉のどこかよそよそしい雰囲気に優一が声を曇らせると、咲也が顔を上げた。
「ねぇ、兄様。今日から俺と一緒の部屋で暮らしましょう!」
頬を赤くしてとろけんばかりの笑顔を見せる弟に優一がバッサリ切り捨てた。
「嫌だ。つーか、キモい」
「どうしてですか?」
「どうしても何も弟と同室とかありえない。寂しいなら渉や他の奴と同室にでもなれ」
肩を押して体を離された咲也は嫌だと兄の腕へと纏わりついた。
「兄様〜。そんなつれないこと言わないで!っというより、今日から毎日会えるんですね!毎日、兄様を生で見られるなんて幸せ過ぎます!!」
本当に嬉しいと微笑む無邪気な笑みに優一は呆れたと、弟の頭を撫でた。
「そういうことするから、咲也が気を持つんじゃないの?」
それを見ていた渉が少し険の含む声を放ち、門倉兄弟は目を丸くした。
「……べつに。咲也とゆう兄のことに興味なんてないからいいけどね」
素っ気ない態度で二人を一瞥すると、渉は二人に背を向けて自分の教室となる一年A組へと向かった。
「喧嘩でもしたのか?」
いつも素直で温厚な渉が笑顔を見せるどころか、敵意を露わにしてきた事に優一は驚く。
それは咲也も感じ取ったようで眼鏡の奥の瞳を丸くさせる。
「とくに喧嘩とかはしてないんですけど、なんだか最近変なんですよね……」
中学を卒業するあたりから渉は日によって自分へ向ける態度が違った。
いつも通りの優しく温和な空気で明るい日もあれば、今日のように素っ気なく冷たい突き放すような日もある。
いまいちその法則が分からない咲也は最初こそ悩んだが、考えるのも億劫だと気にかける事を放棄した。
「渉の事なんかより、兄様!今日は夕食、一緒に食べましょうね!」
いつも通り気を取り直した咲也はにっこりと笑顔を見せて兄へと擦り寄った。
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