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第166話

「ゆーいちぃーーー!!?」 消灯時間が過ぎたのに、無遠慮にも部屋の扉がノックされ、綾人は恐る恐る扉を開くと、まさかの人物に驚きから叫ぶように名を呼んだ。 「こんばんは。綾ちゃん」 愛してる!と、抱きついてはスリスリ頬擦りしてくる恋人に綾人は何事かと目を瞬かせる。 「な、な、なんで、ゆーいちがいるの!?っていうか、お仕事いいの!?」 ここ最近、超多忙な優一は最愛の恋人の綾人との時間すら確保がままなっていない。 週末は優一所有のマンションで過ごす約束も今となっては叶わず、ここ1ヶ月はお互い顔を合わせていなかった。 電話ですら、優一が綾人を気にかけ、一日に数回かけるが、繋がる時間はおよそ1分が限度だった。 「あ〜……。可愛い、可愛い、可愛いぃ!最近マジで構えなくてごめんね。大好きだからね」 頭に額、瞼に頬とあらゆる場所にキスの雨を降らせる優一に綾人は赤面しては、意外と逞しい胸元を押して距離をとった。 「ちょ、ちょっと!ここ、寮だから!っていうか、お仕事忙しいんじゃないの?」 早く中へ入ってと、恋人の手を引いて部屋の中へ入れると、優一は扉が閉まると同時に綾人を抱きしめた。 「うん。めっちゃ忙しい。忙しいんだけど、綾の顔見なきゃって思って〜」 耳をカプっと甘噛みし、嬉しそうに告げてくる優一に綾人はパニックから徐々に立ち直り、今度は嬉しさが沸き起こっていた。 そろそろと優一の背へ腕を回してキスを強請る。もちろん、その願いはすぐに叶えられた。 「綾ちゃん、寂しかった?」 「………ん」 恥ずかしそうに小さく頷き、胸元に顔を埋めてくる天使に優一がノックダウンした。 抱く? ここは一発いっとかないと!! 随分と触れていなかった恋人を前に優一の欲情に火がついた。 ガバッと綾人をお姫様抱っこし、部屋の奥にあるベッドまで運ぶ。 そのまま勢いに任せて天使へ覆い被さり、情熱的なキスをしようとしたとき……… 「ストップ!」 と、綾人の手が優一の唇を押し退けた。 パチパチ瞬きして、驚く優一に天使が制す。 「お仕事に集中できないぐらいのことがあったんでしょ?」 それは自分ではないと確信を持つ綾人は優一にここへ来た本当の理由を教えろとニッコリ微笑んだ。

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