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第40話
優一含め、綾人もまたこの恋に本気なことを渉は感じた。
それをなんらかの理由にて離れることを決意する綾人の苦悩も想定がつく。
恐らく、問題は門倉家だろう
日本の秩序を守るあの門倉家嫡男と将来を見据えるのは一般人というだけで、到底無謀なことだと思えた。
まして、男となればその確率はゼロに等しい。
先行きが真っ暗な二人の未来に渉は青い空を見上げて大きく息を吐き出した。
「ゆう兄も苦労してるんだな……」
「兄様!兄様!!兄さまぁぁあぁぁーーー!!!」
入学式を終えて早二ヶ月が経とうとするものの、生徒会はすでに翌日から始動していた。
放課後は殆どの役員は生徒会室へと集まってクラブ予算やら寮での問題、新入生の指導の相談が持ち込まれていた。
ブラコンの咲也はこの放課後が待ち遠しいらしく、生徒会室へ来るなり兄の優一にべったりへばりついていた。
それプラス、優一が綾人を構う度に小言を浴びさせたり嫌がらせをしたりと見るに耐えない幼稚な数々に渉は綾人へ指示を仰いで貰ったり冗談を言っては談笑するなどと自然と綾人を庇う形となっていった。
それに対して咲也自身は気に掛けてない様子だったが、兄の優一がやたらと敵対心を飛ばしてきてやり辛いことこの上ない。
「渉、喋ってないでコレに目を通せ。あと、こっちの数字パソコンに入力しろ。予算案の資料のコピーも人数分とっとけ」
綾人と話をする度に二、三個仕事を命じてくる優一に渉ははいはいと呆れ気味に仕事をこなしていった。
そのあからさまな嫌がらせに綾人が抗議してくるのだが、それがまた優一の怒りに油を注いだ。
「綾!渉に近寄るな!!」
「ゆーいちが渉君に嫌がらせするからだろ!」
「嫌がらせじゃない!仕事を与えてるだけだ!!」
「ゆーいちがやってることはパワハラじゃんか!」
周りを憚ることなく言い争いを始めだす二人に咲也がもっと揉めろと余計な一言を呟いた。
「渉って最近よく白木綾人と夜中、密会してるよね」
その知られざる事実を今初めて知った優一は顔色を一気に変えて綾人を掻っ攫うように腕を掴んで部屋を出ていってしまった。
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