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第41話
二人が去った後、険悪な空気を残した生徒会室で渉は咲也を怒鳴りつけた。
「咲也!お前、いい加減にしろよ!」
「いい加減もなにも真実だろ?昨日も白木綾人と学校の中庭で会ってたくせに」
「……」
己の怒号にどこから仕入れているのか、自分と綾人の情報にしれっと答える咲也相手に渉は腹の底から苛立ちが湧き上がってきた。
「咲也。綾ちゃんにどれだけ嫉妬して嫌がらせを繰り返してもゆう兄が本気な真実は変わらないぞ」
「今はだろ?兄様が卒業したら終わりだ。兄様だって目が覚める」
『本気』という言葉に咲也の目が不服そうに細められた。
それを見た渉が咲也を見下すように吐き捨てる。
「ゆう兄なら綾ちゃんのことどんな手を使っても囲うと思うけどね。お前だって何と無く分かってるだろ?」
敢えて同意を求めるような言い方に咲也の顔が徐々に怒りで歪んでいく。
そして、低く憎しみを込めるように呟かれた。
「そんなことさせない…。白木を殺してでも兄様から引き離してやる!」
「綾はとてもいい子だよ」
不穏な言葉の連続に心が痛んだのか、突如、透き通るような声が咲也を制した。
その声の主へ視線を向けると、漆黒の瞳が真っ直ぐ自分を射抜き、続きを口にした。
「綾は自分の事より周りを優先するし、自分のことより門倉先輩の事を何よりも考えてる。咲也君がそこまで嫌うような……」
「どれだけいい奴かなんてどうだっていいんだよ!白木が兄様の恋人ってだけであいつは邪魔なんだ!」
綾人を擁護するのは優一の親友で幼馴染みである猛の恋人、西條 ざくろだった。
話の途中で咲也にて怒鳴り声をあげられ言葉を遮られるものの、ざくろは負けじと言い返した。
「そんなの君のわがままじゃんか!門倉先輩の幸せとか考えないわけ!?」
「兄様を幸せにするのは俺だ!大体、兄様は騙されてるんだ。門倉の名前に白木は取り入ろうとしてる。もしくは慰謝料でも……」
「綾はそんな子じゃない!」
「そんなの本当かどうか分からないだろ!お前だって九流の次男が好きとか口では言って、本音は莫大は金銭に目が眩んで……」
ざくろを貶めるような言葉に渉が口を開くより早く、それを聞いていた猛がドカンッと拳で自分のデスクを打ち付けた。
大きな音に二人は口を塞ぎ、猛を見た。
「咲也。ざくろに難癖付けてみろ。ぶっ殺すぞ」
冷ややかな黒い瞳に睨みつけられ、地を這うような声に咲也は背中に汗を一筋流した。
凍てつくような空気が生徒会室を包み込み、皆が黙って俯くと猛が静かに業務を再開するよう唱える。
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