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第42話

結局、その日は優一と綾人が生徒会室へ戻ってくる事はなかった。 それは咲也の心をかき乱し、生徒会業務が終わると同時に一目散に兄の寮の部屋へと直行することとなった。 「兄様!!!」 ダンダンダンッと、拳で扉を叩いては兄を大声で呼び続けると鬱陶しそうに数分後に扉が開かれたのだが、出てきた優一の姿に咲也は目を見開いて息を呑む。 「っ!」 上半身裸でおざなりに履かれたズボンはファスナーもボタンも開かれて下着が露わになっていた。それプラス、優一からは明らかに情事に更けていたと言わんばかりの色香が舞い上がっていた。 「なに?」 兄からは発せられた掠れた声に我に返ると咲也は部屋の中へと視線を向ける。 ベッドの上にはタオルケットを被せられた綾人が身じろいでいて奥歯を噛み締めた。 そんな弟の視線に気が付いた優一は顔を向けると、ベッドから起き上がろうとする綾人へ皮肉を込めた命令を飛ばした。 「綾まだ動ける体力あるの?それならまだ抱くから帰るなよ」 放たれたその言葉に綾人が怯えた目を向けてくるのを一瞥し、優一は弟へと向き直った。 「用がないなら帰れ。あと、むやみやたらと俺の部屋へ来るな。邪魔だから」 素っ気ない冷めた声にて優一は告げ、扉を閉ざそうとした瞬間、咲也は待ってくれとその扉を手で押さ込んだ。 「兄様!本気であいつに惚れてるんですか!?本気なんですか!?」 「……」 「あんな奴、兄様には似合ってません!いい加減、目を覚まし……」 「本気だよ。綾しかもう目に入らない。例え俺に似合ってても似合ってなくても、どうでもいい。ただ、俺が綾人を愛してるんだ」 声を荒げて必死に訴えてきた弟に優一は冷静な声と瞳で向き合った。 「俺、綾と結婚するから」 最後に放たれた信じがたい台詞はあまりにも現実味を帯びてなさ過ぎて咲也は硬直する。 「……そんなの父様達が」 許すわけがない なんとか絞り出した声にてそう続けようとした瞬間、優一は自分と同じ紅茶色の瞳を細めて柔らかな笑みを浮かべた。 「ごめんな。その時はお前に門倉家を任せるよ」 生まれて初めての兄から出た門倉家に付いての無責任な言葉に思考が停止する。 咲也は何も言えず、動くことも出来ずにいると、もう一度ごめんと謝罪され、ゆっくりと目の前の扉を閉ざされた。

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