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第171話

「渉!一緒に麗美へ謝ろう!!」 昨夜、優一と綾人に貰ったアドバイスで元気を養った咲也が朝一に渉の部屋へと乗り込んだ。 時刻は午前5時。 まだ全然眠たいと、半分夢の世界の渉だが、咲也の発言に覚醒する。 「ふ、二人で会う気?」 「そう!俺も一緒に会って謝る!あと、九流家にも行って一緒に謝る!」 ベッドの上へまだ寝そべる渉の腹にボフッと馬乗りになりながら意気込む咲也に渉がそれは……と、表情を曇らせた。 「やめた方が良くないか?きっと、麗美が傷つく」 「一人で行っても二人で行っても麗美は傷つく!なら、俺も会って麗美を説得したいんだ」 渉だけに重荷を背負わせたくない気持ちと切実に自分の想いを麗美に伝えたい気持ちから一晩考え抜いて出した咲也の結論を伝えた。 「………それは、咲也の独りよがりにならない?っていうか、どうしたんだよ」 麗美を思うと、咲也と共に会う事は得策とは思えず、渉は渋った。それと同時にこのような結論がどうして、出たのか不思議にも思った。 なかなか承諾しない渉に咲也は少し躊躇った後、昨日の夜、兄と綾人が訪ねてきたことを打ち明けた。 「兄様と白木からアドバイスを貰ったんだ……」 「ゆう兄から!?」 一番聞きたくなかった名前に渉の声に険が帯びた。 「なに?もしかして咲也、ゆう兄に相談したの?」 「ち、違う!ただ兄様がもう事情を知ってて、心配して来てくれたんだ!」 「それで?」 「それで………って…」 嫌そうな顔で詰め寄ってくる渉に咲也は口籠ってしまった。 「それで結局、相談したんだ?つーか、結局、兄様かよっ!」 優一にこれ以上弱味を見せたくなかった渉からしてみれば、咲也が相談したことが許せなかった。 確かに自分が不甲斐ないからなのだが、自分が一番嫌がる相手に相談するなんてと、怒りが込み上がる。 「あのさ〜、ちょっとは俺の立場も考えてよ!この事でゆう兄に結局、嫌味言われたりすんのは俺じゃんか!」 「そうかもしれないけど、でも、凄く心配してくれて……」 「どうせ、咲也のことだけだろ!」 強い口調で言われ、咲也は驚いて硬直した。 「ゆう兄は結局、咲也だけが可愛いんだよ。いつだってそうだ!失敗は全部俺のせい。汚れ仕事も全部俺。美味しいとこはちゃっかり自分のモノにして……」 腹ただしいと優一を罵倒する渉に咲也はショックを受けた。 兄のことをそんな風に思っていたのかと思うと、怒りに目の前が真っ赤に染まった。 「なんだよ、それ。兄様が悪いんじゃない。お前の能力が低いからだろ!責任転嫁するなっ!」 渉の肩を思い切り押して、咲也が怒鳴ると、一番言われたく無かった言葉に渉は咲也の頬を平手で叩いた。 「あっ!」 カッとなって手を上げてしまったが、手を上げて直ぐに渉は自分を取り戻し、己のやったことに一気に青褪めた。

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