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第174話

気まずい…… あれから渉と咲也は膠着状態が続いていた。 今日もお互い学校へ来ては、いつも通りに振る舞っているが、絶対に近付かないし、目も合わせない。 そんな状態が数日続いて、渉の心はズタボロになるほど疲れきっていた。 今日も盗み見るように物静かに教室の自席で佇む咲也を気にかける。 話しかけたいが、日にちも経ってるがためになかなか勇気が起きず、気落ちする。 自分が完全に悪いので平謝りをするべきなのは承知なのだが、咲也の醸し出すオーラが人を寄せ付けなくて、近寄ることが出来ずにいた。 自分が気にかけていることに咲也も気付いてはくれてるはずなのだが、目も合わせようとはしない態度に渉は頭を悩ませる日々を送っていた。 そのとき、ブレザーに入れていた携帯電話のバイブが鳴る。確認するとメールが入っていて、相手は麗美からだった。 『土曜日が楽しみ!夕飯も一緒に食べようね!」 久しぶりに2人きりで会う約束に舞い上がる麗美からのメールで渉の心がまた一つ重くなった。 ………もう麗美と結婚しちゃえば楽かな ふと、楽な方へ逃げるような思考が頭を過り、渉はサッと青褪めた。 バカ、バカ、バカ、バカ‼︎ 己の怖すぎる弱さに渉は頭を抱えてしゃがみ込む。 そんな事をしたら、周りからは軽蔑され、咲也も荒れ狂う。潔癖症状がまた酷くなったらと思うと、それこそ大事だと、渉は頭を掻きむしった。 もう思考がぐちゃぐちゃで何がどうなればいいのか分からない。 誰も傷付かず、皆んながどうすれば幸せになるのかを考えることが難し過ぎて渉は頭の中を困惑だらけにした。 とりあえず、考えを纏めようと重い足取りで教室を出た渉は1人になりたくて屋上を目指した。 そんな渉の後ろ姿を見る咲也は苦笑すると、大きな背中を瞳に焼き付けるように見つめたあと、目を閉じて、小さく深呼吸した。 数分、精神統一して、決意を固めると、心を律した咲也は席を立った。 「仕方ない……、助けてやるか」

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