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第178話
「足が疲れたね〜」
「大丈夫?もういい時間だし、送るよ」
沢山買い物をしたと笑う麗美に渉も笑顔になる。
18時予約の店は渉の好きなイタリアンの店で、2人は個室で寛いだ。
「あのね婚約発表なんだけど、服はおば様に買ってもらった赤いドレスにするね。渉のスーツも買ったから!また九流家で袖を通してね」
「うん。ありがとう。会場って決まったの?」
「うん!勇さんがした所と同じホテルにしたの!それで、料理はね……」
永遠止まることなく、嬉しそうに話す麗美に渉は笑顔で相槌を打ち続けた。
これでいい……
間違えてない
心の中で呪文のように何度目かの言葉を紡ぐ。
食事も終盤で、デザートのプリンが運ばれてきた渉は嬉しそうに笑った。
「ここのプリン美味しいんだよな〜」
「渉、プリン好きだよね」
「うん。っていうか、咲也が好きなんだよな〜。あ!すみません!」
部屋を出ようとする店員を呼びとめ、渉は追加注文した。
「持ち帰りでプリン2つお願いします」
「かしこまりました」
店員が部屋から出て行くと、渉はプリンをひと救いして口に頬張った。
「やっぱ、ここの美味い!」
「……プリン、咲也に?」
スプーンを置いて聞いてくる麗美に渉が頷いた。
「ああ。久しぶりだから、持っていってあげると喜ぶかなって」
「………そう」
渉の言葉に麗美はにっこり笑うと、プリンを口へと運んだ。
食事を済ませ、21時までには麗美を高円寺家へと送り届けた渉は寮へと戻った。
咲也へのお土産の帽子とプリンを片手に長い廊下を歩く。
別れてからちゃんと話をしなかったが、これを機に元の幼馴染みへと戻れるようお願いしようと思う。
承諾してくれるか分からないが、今は緊張からか、心臓がうるさくて渉は目眩がした。
お土産へ視線をやると、咲也が喜ぶかなと思うと心が弾んで足が軽くなった。
会いたい
早くと、駆け足で渉は咲也の部屋へと向かった。
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