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第180話
「あの馬鹿っ!手伝えって言ってて、なんでアイツが来ないんだよっ!」
咲也は思い切りキレながら、生徒会室にて膨大な量のファイルからある資料を漁っていた。
生徒会室で過去のイベント事に使用した明細書が急遽必要提出物となり、副会長の綾人がそれを調べることになったのだ。
なったのだが、一人じゃ無理と泣きつかれた恋人の優一が一昨日、咲也へ手伝えと命令を下した。
今日、放課後一緒に資料集めをするはずだったのに、かれこれ1時間ほど、綾人は来なくて咲也は一人、懸命に作業を行なっていた。
「くそっ!兄様の命令じゃなきゃ、とっくに帰るのにっ!!」
大好きな兄に言われたからには放置できない咲也は綾人を呪いながら必死に明細書へ目を走らせる。
そのとき、ガラッと扉が開く音に咲也は怒鳴り声を上げた。
「やっときたか、このバカッ!………って、あれ?」
扉の前に立つのは呪っていた天使ではなく、去年一緒に生徒会役員をした二宮 神楽(にのみや かぐら)だった。
「よっ!弟!久しぶり〜」
右手を上げて、軽快に挨拶してくるこの男は兄と同級生で、以前、言い寄られた経験もある。
「あれ?渉いねーの?」
一緒に作業していると思っていた二宮がキョロキョロ辺りへ目を配らせた。
「俺しかいません」
ムスッと答えると、二宮はそうかそうかと部屋の中へ入ってきた。
「綾ちゃん、優一に捕まってこれねーから」
「はぁあぁぁーーー!?」
優一からの伝言を伝えにきたと、笑う二宮に咲也は叫んだ。
「てっきり渉と二人で作業してるって思ったからさ。一人なら俺も手伝おうか?」
可哀想にとファイルの横で座り込む咲也の隣に二宮がしゃがむ。
「………何もお礼できませんよ」
結構です。と、断りたかったが、あまりにも地道でしんどい作業に手伝って欲しいという気持ちが勝り、咲也が告げる。
「はいはい。そんなの期待してねーよ」
相変わらず、サッパリした性格の二宮は咲也のサラサラの髪を撫で付けた。
そのまま散らばるファイルを手に取り、真面目な顔で資料へ目を配る。
途方もない仕事量に心が折れかけていたが、咲也は意外な助っ人にヤル気を見出し、再び資料漁りを再開した。
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